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父親たちの星条旗

Flagsofourfathers

最初からいきなりネタバレしちゃってるかも。。。                                                   

                                                                                                 

仲間と同じ言葉で”help me”と助けを求める日本兵・・・衛生兵であるドクは一瞬困惑した表情を見せつつも日本兵に止めを刺し、その直後、到底助かりそうもない傷を負っている仲間のアメリカ兵を助けようとする。冒頭から考えさせられるシーンでした。

<あらすじ>

太平洋戦争末期、硫黄島に上陸したアメリカ軍は日本軍の抵抗に苦しめられ、戦闘は予想以上に長引いていた。そんな中、擂鉢山の頂上に兵士達が星条旗を掲げた瞬間を撮影した1枚の写真が、アメリカ国民を熱狂させる。写真に写っている6名の兵士のうち、帰還したドク(ライアン・フィリップ)、レイニー(ジェシー・ブラッドフォード)、アイラ(アダム・ビーチ)の3名は、英雄として国民に迎えられ、戦費を調達するための国債キャンペーンに駆り出されることになる。父親たちの星条旗/硫黄島からの手紙公式サイト

『父親たち~』で描かれる日本軍は、気配を殺して塹壕から米兵を狙い撃つ銃口であり、恐ろしい砲弾を放つ真っ黒な擂鉢山そのもの。『硫黄島~』での、圧倒的な物量で島を落とさんとする戦艦やB29などの、鉄の塊でしかない米軍の描き方とダブります。でもその不気味な銃口の向こう側には、栗林中将や西郷がいて、日本にいる家族を守りたくて必死で戦っているだけなのだと、『硫黄島~』を観た後であるが故に思えました。そしてそれは、生きて家族や恋人の元に帰りたいと望む米兵達だって同じ。

戦闘シーンと、本国での帰還兵3人を取り巻く熱狂とが交互に映し出されることによって、若い兵士達の心に深く刻まれてしまった地獄のような戦場での真実と、それを知ろうともせず、ただもてはやしたり利用しようとしたりする人々とのあまりにもズレた認識や、人を殺した罪の意識に苛まれながら、責められることなく英雄扱いされる彼らの複雑な心情などが、徐々に理解できるような作りになっていました。

ドク役のライアン・フィリップも、レイニー役のジェシー・ブラッドフォードも、『54フィフティー★フォー』や『チアーズ!』の時にはカワイイ♪って感じだったのに随分とオトナになってた。理不尽な人種差別に苦悩するアイラ役のアダム・ビーチにはやはり涙。ジェイミー・ベルやポール・ウォーカーが出ていたのには全く気付かず・・・

ジェイミー・ベル演じるイギーが、いったいどんなリンチを受けて殺されたのかは語られないけれど、仲間の冗談にも簡単に騙されてしまうような純粋な青年・・・というよりは少年が、なぜそんな殺され方をしなければならなかったのか。”玉砕”という凄惨な最期を、日本兵達に選ばせたものは何なのか。戦場の混乱の中、味方に撃たれて死んだ米兵達は、とても無念だったと思うけれど・・・私にはただ戦争が彼らを追い込み、殺し続けている、という風にしか見えなかった。

戦争を始めたのは彼らではない。戦場へ若者を送り続け、人殺しをさせ、心にも体にも傷を残したあげく、”英雄”として祭り上げることによって国策に利用する。彼らの傷ついた心をさらに踏みにじり、その後の人生すら悲惨なものにしてしまうのです。そしてそれは、今も続いてる。

海で子供のようにはしゃぐ兵士達の美しい姿が、いつまでも忘れられません。

硫黄島からの手紙』を観てしまった後だと、正直どうしてもあちらの印象の方が鮮烈に残ってしまうのですが、この2作品は、アメリカから見た硫黄島と日本から見た硫黄島とを比べてみることはできても、映画としての良し悪しを比べるものではないなと思いました。というよりどちらも傑作であり、観ておくべき作品だと思います。

エンドロールで見られる当時の写真は映画の各シーンそのもので、多くの資料を元に、イーストウッド監督がいかにリアルな映像を我々に見せつけてくれたのかが分かりました。

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コメント

この文章を読んだだけでも胸が詰まる思いです。
バタバタしててまだ映画を観れてないけど、どっちから先に観た方がおすすめかな?

投稿: sakuramochi | 2006年12月18日 (月) 18時52分

sakuramochi様

星条旗の方が早く終ってしまうんじゃないかと思うので、
どちらも観るなら星条旗からかな?と思うけど…
観たい方から観たらいいような気もします。
硫黄島だけでも観る価値あるよ。

投稿: kenko | 2006年12月18日 (月) 23時08分

しっかと読ませていただきました。
アイラのようなインディアンの社会問題は今でも残っているようですね。
強く富めるアメリカで行き倒れる人がいる、というのは衝撃でした。
ボクも「硫黄島からの手紙」のほうが強いインパクトを受けました。やっぱり日本人ですから、どうしても感情移入してしまうのかもしれません。
TBありがとうございました。

投稿: とりこぷてら | 2006年12月19日 (火) 00時56分

とりこぷてら様

しっかと読んで頂き、ありがとうございます。
アイラのような社会問題は今でも…
そうなんですか。。。
差別しているという自覚すらない人々の言葉や行動と、
それに直面した時のアイラの絶望したような表情が印象的でした。

日本人ですから…やはりそうなっちゃいますよね。
しかも『父親たち~』の方は、個人的には若干お話が分かりにくい点もあったりしたので
機会があったらまたじっくり観なおしてみたいです。

投稿: kenko | 2006年12月19日 (火) 14時21分

昨年は楽しませて頂いたりコメント頂いたりありがとうございました

実は『父親たち~』よくわからないところが幾つかあって。kenkoさんのおっしゃっているイギーの死の理由とか、冒頭でドクが助けようとした負傷兵がなんで殺されてしまったのかとか。最初に旗を立てたのが誰でその後に立て直したのが誰で・・・というのも未だに理解してません(笑)。集中力の無さを恥じる次第です

結局一番わかりやすかったのはネイティブ・アメリカンの彼のお話ですね。黙って英雄面してればいいのにそれに耐えられない。そうした純粋さにかえって苦しめられる様子が大変痛々しかったです
あと「栄光」つーのは本当にはかないもんだなあ、というのもよくわかりました

硫黄島を舞台にした映画ではテレンス・マリックの『シン・レッド・ライン』というのもありましたっけ。そっちの硫黄島はやけに緑豊かだったような。微妙に『父親たち~』と似てますけど、もう少し冷めたムードの作品でした

ところでこちら、リンクさせてもらってもよろしいでしょうか? よろしくお願いします

投稿: SGA屋伍一 | 2007年1月 6日 (土) 12時41分

SGA屋吾一様

こちらこそ~
いつも楽しいコメントを書き込んで頂いてありがとうございます!

いやいや私もこの『父親たち~』はよく分からん箇所がいっぱいあります。
しかも、時間の経過と共にどんどんよく分かんなくなってきてます。(←アホ)
ネイティブ・アメリカンの彼のお話だけは、確かにすんなり感情移入できました。
最初に旗を立てたメンバーの中に、バリー・ペッパー演じるマイクはいたような・・・
そして英雄として祭り上げられる三人は、後から立て直した旗のメンバー・・・でしたよね?
これ以上は全然自信がナイので黙っておくことにします。。。

『シンレッドライン』、実は観てなくて。
私が知らなかっただけで、硫黄島を舞台にした作品ってけっこうあるんですね!

リンク!いいんですか?ホントに?
SGA様にリンクして頂けるなんて、大変大変光栄でございます!!
どうぞよろしくお願いします♪♪

投稿: kenko | 2007年1月 6日 (土) 23時22分

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