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それでもボクはやってない

Soreboku

隣りに座っていた年配のご夫婦。劇場が明るくなってすぐ、ご主人の方が奥様に「恐ろしい映画だったね」とおっしゃっていたのが印象的でした。

<あらすじ>

フリーターの金子徹平(加瀬亮)は、会社の面接に向かうため通勤ラッシュの電車に乗っていた。駅のホームに降り立った彼は、女子中学生から痴漢行為を問いただされる。駅事務所、警察署、そして検察庁でも一貫して無実を訴え続ける徹平はついに起訴され、法廷で全面的に争うことになるのだが・・・それでもボクはやってない公式サイト

周防正行監督、前作『Shall We ダンス?』からなんと11年ぶりの監督作品ってのにまずビックリ。リチャード・ギア主演のリメイク版がわりと最近だったから、そんなに久々って感じはしないのだけど。今作のメイキングをたまたま見たのですが、撮影初日に「まず俺に”よーいかっちんスタート!”の練習させて!」「10年ぶりのオッケーだーははは」なんて言って朗らかに笑う周防さん、ちょっとカワイイ♪

とある痴漢冤罪事件を伝える新聞記事に感心を持ち、3年に及ぶ取材を続けてきたという周防監督。「知ってしまった人は、キチンと伝えないといけないことだ」という初めての使命感に駆られてメガホンを取られたとのこと。法廷のシーンばかりでなく、留置所での扱われ方や検察庁の取調べなど、これまでの映画やドラマでは見たこともないくらい詳細な描写がとても興味深かったです。

上映時間の長さを感じさせない、緊迫した143分。物語はわりと淡々と進んで行くのに、気が付いたら食い入るように画面に見入ってしまってました。法廷のシーンなんて、実際その場にいて傍聴しているかのような臨場感。被告人、証人、弁護人、検事、そして裁判官。やりとりされる言葉のひとつひとつを、近年稀に見る集中力でもって必死で聞きましたです。人の記憶というのは先入観や思い込みも相俟って当てにならない上に、日本語の言い回しときたらなんと曖昧で複雑なことか・・・。

無実なんだから有罪になるはずがない、という誰もが当たり前のように思っていることが、実は当たり前でないという衝撃。平凡に暮らしていた日々をある日突然理不尽なやり方で奪われてしまった徹平の絶望を、とてもリアルに演じた加瀬亮さんには今回も魅了されました。彼、どこにでもいそうでいない稀有な俳優さんですね。暗さを秘めた目力がすんごい。この役を演じるにあたっては「成長しないことを心がけた」そうで、無実を主張する徹平に感情移入しつつも、「ほんとにやってないのだろうか」とつい心のどこかで疑ってしまうような挙動不審さが絶妙でした。

この映画を観た世の中の男性は「あんな目には会いたくない」という方が殆どだと思うのだけど、一応女子のはしくれである自分としては、痴漢行為を受けた女性の屈辱的な思いとか、あるいは「もしも身近な人が痴漢冤罪事件に巻き込まれてしまったら?」という場合の方がやはりなんとなく想像しやすいです。身近な人、と言って真っ先に思い浮かぶのはうちのダンナ殿なワケで。”240%の乗車率”なんて私達の生活圏ではありえないけれど、一応「満員電車に乗る時は、女性の方を向いて乗ったり、挙動不審な動きをしたりしないように!!」と、クギをさしておきました。

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映画」カテゴリの記事

コメント

こんにちわ!

私もホントにホントに怖い映画だと
思いました。
こういうテーマを取り上げ、堂々と映画に
してくれた監督、素晴らしいと思います。
いつ自分や身近な人間が巻き込まれるかも
しれないこういった状況を、実にリアルに
そして分かりやすく丁寧に描いてくれて
いたと思います。

≫彼、どこにでもいそうでいない稀有な俳優
さんですね。暗さを秘めた目力がすんごい

ホント。
加瀬くんって素人風味な演技をさせたら
ピカイチですね。なんでもない普通な感じを
演技してしまうって、かなり難しいと
思います。

投稿: 睦月 | 2007年1月25日 (木) 15時28分

睦月様

最近マンガのことばっか書いてましたのですが、ようやく映画の感想も書けましたw

周防監督、やってくれました。
徹底的に取材したらしい冤罪事件をめぐるキメ細やかな描写が、
非常にリアルかつ分かりやすく、へぇ~!の連続。
ホントいつ巻き込まれるか分からないことだから、
余計に深く考え込んでしまいます。

素人風味の加瀬さん、ハマリ役でしたね。
あのいかにもダメな若者風しゃべり方とか絶妙でした!

投稿: kenko | 2007年1月25日 (木) 17時45分

痴漢だけに限らず冤罪はあるでしょうから、どこで巻き込まれるか分からないのが恐いですね…
あのあと被告人、どうなっちゃうのかスゴク気になりますね。

投稿: とりこぷてら | 2007年1月26日 (金) 23時53分

初めまして!

本当に恐ろしい映画でしたね。
だって男性の方なら全ての人に
可能性があるところがまた怖い。
やってなくてもやったって言われたら・・・
旦那さんには釘を刺して正解ですよ。
疑われるようなことはしちゃだめですね。

投稿: ALICE | 2007年1月27日 (土) 04時16分

とりこぷてら様

そうですよね。冤罪は痴漢だけに限らないワケだから、
私も夫にクギをさしてる場合じゃないのかもw

ほんと~あの後どうなっちゃったんでしょう。。。
いい方向にいってればいいけど・・・

投稿: kenko | 2007年1月27日 (土) 15時02分

ALICE様

初めまして!
TBとコメントありがとうございます☆

普通に生活しているだけでも
徹平と同じ目に合ってしまう可能性が
大いにあるところが恐ろしいですね。。。

ダンナには私から諭すよりも
とにかくこの映画を観てもらうのが
イチバンいいのかもしれません。

投稿: kenko | 2007年1月27日 (土) 15時31分

こんにちは~♪

ほんと怖い映画でしたよね。
無実なのにね。。。

女性専用車両があるくらいだから
今度は男専用車両も作らないと。。。
ですね。

投稿: うさぎ | 2007年1月29日 (月) 12時46分

うさぎ様

コメントどうもです。

コワいコワ~い映画でした。
無実なのに!なんで?!としか言えませんよね、ホント。。。

>今度は男専用車両も作らないと

それもそうですね。
男性を痴漢冤罪から守る必要もあるんじゃないかとか、
考え始めるとワケわかんなくなってきちゃいますw

投稿: kenko | 2007年1月29日 (月) 15時57分

kenkoさん、よく大ボケかますほうなんで、
(先日もライブの日を間違えてましたが;;)
たとえぜったいやってないとしても、
自分なら
当日の事明確に聞かれた所でそんなに
詳細に覚えてないんじゃないかなぁと
怖くなってしまいました。
「覚えてないけど、とにかくやってません」
ってめちゃくちゃ信用性の低い答弁しか
出来ないと思うと・・(笑)。
この映画はある程度ちゃんと覚えていようが
捕まったらそれまで!みたいな理不尽さを
感じる理不尽ムービーですよね。
コレもしラストに「実はボクがやってました!」ってエンディングひっつけたとしても
それはそれで映画として成り立つなぁと
思いました(笑)観た人怒るでしょうけど・・・。

投稿: kazupon | 2007年1月30日 (火) 13時58分

kazupon様

よく大ボケかますほう…なんですか?(笑)
小心者な私の場合、一応女子であるのでチカンに間違われるなんてことはないにしても、
あんな風にコワイ刑事さんにどなりつけられたり、わけわかんない法廷用語で問いつめられたらそれだけでテンパってしまって何にも言えなくなってしまうと思います。。。

実は、映画のラストで判決が出た後ですら、まだどんでん返しがあるような気がしてましたw
(とことん人を信じられないやつ…)
そうなると確かに怒る人は多いでしょうけど、映画としてはアリかも?

投稿: kenko | 2007年1月31日 (水) 11時30分

kenkoさん
今晩は☆★
日本の裁判制度に、憤りを感じますね。
映画を楽しむはずが、色々と考えてしまい
「これでいいのか!」と・・・・。
周防監督のこの作品で、少しでも
変わるといいのにと願うばかりですm(__)m

投稿: mezzotint | 2007年2月 5日 (月) 23時07分

mezzotint様

感じますね~憤りを!!
これじゃダメですよね、日本の裁判。
おしつけがましくなく問題提起していていろいろ考えさせられつつ、
映画としてきっちり面白く作ってあるからこそ意義があるなぁ!と思いました。
つまんなかったら誰も観ませんものね。。。

投稿: kenko | 2007年2月 6日 (火) 14時37分

kenkoさん、こんにちわ☆
エンタメ寄りの作品では決してないのに、作品に引き込まれていく力がすごかったですね。
実はミーハーなので、俳優さんに注目して映画を観ることも多いのですが、加瀬くんは今ご贔屓ですー。
全く普通の外見なのに、ナチュラルな感じが好き♪年齢不詳だし・・・確か30超えてるはずなんですけど・・・見えない!
そうそう、それにどこか挙動不審^^

投稿: sally | 2007年2月18日 (日) 15時08分

sally様

sallyさま、いらっしゃいませ☆

とっつきにくいテーマなのに、特に知識がなくてもぐいぐい引き込まれちゃいました!

私だって負けじとミーハーでございますよwふふふ…
映画を観るたび、劇中のカッコイイ俳優さんにいとも簡単に惚れてしまうこともしばしば…
加瀬さん30超えてるのか!
全く見えませんね。もうちょっと下かと思ってた。
加瀬さんの挙動不審っぷりも好きです。
なぜかかまいたくなっちゃうの。

投稿: kenko | 2007年2月19日 (月) 11時14分

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