夕凪の街 桜の国
『夕凪の街 桜の国』の原作&映画の感想です。ちと長いですがご勘弁を。
当初観る予定ではなかった作品ですが、映画館で初めてこの映画の予告篇を観たとき・・・見慣れた風景を目にし、普段使っている言葉を聞いたとき。これは観なければいけない作品だな、と思ったのでした。
<あらすじ>
原爆投下から13年後の広島。母フジミ(藤村志保)と共に原爆スラムで暮らす皆実(麻生久美子)。弟の旭(伊崎充則)は、戦時中水戸に疎開し、そのままおば夫婦の養子になっていた。ある日皆実は、会社の同僚の打越(吉沢悠)から想いを打ち明けられるが・・・
現在の東京。定年退職した父・旭(境正章)、弟の凪生(金井勇太)と暮らす七波(田中麗奈)。ある日、旭の行動を不審に思って後をつけた七波は、途中幼馴染みの東子(中越典子)に出会い、そのまま一緒に深夜バスに乗り広島まで来てしまう。(夕凪の街 桜の国公式サイト)
原作は、広島出身のマンガ家こうの史代さんが描いたコミック。ずいぶん前から書店で平積みされているのを目にはしていたけれど、なかなか手に取る気持ちになれなかったのは、やはりテーマが「ヒロシマ」であったせいかもしれません。
しかし「映画『夕凪の街 桜の国』を観る」と心に決めたからには原作にもトライすべし!と(たった1巻だしね)、先日意を決して読んでみましたところ・・・
驚きました。たった35ページの物語が、こんなにもストレートに力強く胸に迫ってくるなんて。メルヘンチックなかわいらしい絵柄、微笑ましいエピソードに油断して読んでいると、まず登場人物の名前がすべて広島の町の名前であることに軽いジャブを、そして最終的には眩暈がするほど強烈なパンチをくらうことになります。
あとがきに綴られているこうのさんの言葉にも、深く共感。以下長々抜粋。
わたしは広島市に生まれ育ちはしたけれど、被爆者でも被爆二世でもありません。被爆体験を語ってくれる親戚もありません。原爆はわたしにとって、遠い過去の悲劇で、同時に「よその家の事情」でもありました。怖いということだけ知っていればいい昔話で、何より踏み込んではいけない領域だとずっと思ってきた。
しかし東京に来て暮らすうち、広島と長崎以外の人は原爆の惨禍について本当に知らないのだという事にもだんだん気付いていました。わたしと違ってかれらは知ろうとしないのではなく、知りたくてもその機会に恵まれないだけなのでした。だから、世界で唯一(数少ない、と直すべきですね「劣化ウラン弾」を含めて)の被爆国と言われて平和を享受する後ろめたさは、わたしが広島人として感じていた不自然さより、もっと強いのではないかと思いました。
遠慮している場合ではない、原爆も戦争も経験しなくとも、それぞれの土地のそれぞれの時代の言葉で、平和について考え、伝えていかなければならない筈でした。
体験を語ってくれる被爆者の方も少なくなりつつあるというのに、最近では平和学習を端折ってしまう学校も多いという現実。(広島市では、原爆の被害についてよく知らない子どもが増えているという現状に市教委が危機感を強め、各校に働きかけた結果、今年は昨年に比べ75校も増えたそうです。by中国新聞)怒りを通り越し、あきれ果ててしまうような発言を平気でしちゃう元エライ人。何が言いたいんだか自分でもよく分かりませんが、広島に生まれ育ったからにはもっとヒロシマに興味を持ち、受け身ではなく学ぶ意志を持って学び、考え、伝えていくべきなんではないかと。しごく当然のことではあるけれど、この作品のおかげで、アンポンタンなりにええ年こいて改めて思い至ることができたのでした。
んでようやく映画の方。
感想をUPするのが遅くなってしまいましたが、全国よりも1週間早い先行上映にて鑑賞させていただきました。満席でしたが、年配のお客さんかなり多し。車椅子に乗ったおじいちゃんおばあちゃんの姿も。
原作と同じく『夕凪の街』『桜の国』の二部構成で、なるべく原作に忠実に作ろうとしている姿勢に好感を持ちました。皆実の回想シーンにヘタなCGではなく、あえて「原爆の絵」を使用するなど、悩んだ末なんではないかと思われる工夫も。
まずキャスティングがすごくいいと思います。麻生久美子も田中麗奈も、原作のイメージ通り。頑張って広島弁を練習したであろう皆実役の麻生さん・・・撮影前に広島を訪れ、資料館を4時間かけて見学なさったんだそうで。私も十○年ぶりに行ってみよう。
田中麗奈さんのサバサバした演技も素晴らしかった。被爆二世である七波のいかにも現代っ子らしい明るさは、すべてがゼロになってしまった状態から、長い時間をかけて平和を築いてきたことの証のようなもの。「どんなにつらいことがあっても、前を向いて生きてかなきゃいけないのはみんな同じなのにね」というセリフが印象的でした。
映画にしろ原作コミックにしろ、とても美しくて優しい物語だと思いました。そのけして声高ではないけれど力強いメッセージは、観る人読む人の心に静かに確実に届いて、平和について考えるキッカケを与えてくれるんではないでしょうか。
広島ではこの時期、あちこちで連日のように原爆や平和に関連したイベントが行われます。なかでも今年、特に注目しているのは、8月17日~26日にかけて開催される『第2回ヒロシマ平和映画祭2007』。(『夕凪の街~』の公開も、この映画祭のイベントのひとつみたいな感じ)広島人として、映画ファンとして、ぜひとも参加してみたいなと思っとります。
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コメント
私も水曜日に見に行って、なんとも静かな涙が流れてしまいました。
わたしもkenkoさん同じで被爆2世ではないけれど、じいちゃんが被爆をしているのでちょっとまた受け取ったものが違うかもしれませんね。
原爆の後遺症は本当に、ある日突然、身体を蝕んでしまうとっても怖いものというのが私の心にどうしても残っています。
60過ぎまで元気だったじいちゃんが、急に骨髄のがんになって、被爆の傷跡は今も、今からもきっと残っていくのだろうなと今は思っています。
みんながそれとわかるかどうかは別として。。。
ちょっと暗くなってしまいましたが、昔のことだけど、事実を事実として認識しながら生きて生きたいものです。
私達の先祖は、被害者でもあり加害者でもあったのですから・・・
投稿: えす | 2007年8月 3日 (金) 13時03分
えす様
おー!結局観に行ったんだね。
私も涙出ました…すすり泣いている人、かなり多かった。
えすさんはおじいちゃんが被爆されてたのね。
長い付き合いだけど知らなかったよ。
それは私よりもずっと原爆を身近に感じることでしょう。
原爆の後遺症のことや、被爆二世のことなど
若い世代には知らない人が結構多いらしくて、
七波役の田中麗奈も「今回初めて被爆二世のことを知った」って
何かのインタビューで言ってました。
個人にできることは限られているかもしれないけど、
せめて将来自分に子どもができた時、きちんと教えてあげられるよう
勉強しておかなきゃなと思いました。
>被害者でもあり加害者でもあった
そう、それもけして忘れてはいけないことですね。
投稿: kenko | 2007年8月 3日 (金) 13時57分
こんばんは。
私も広島で生まれ育ってますが、被爆経験者でも被爆2世でもありません。
しかし、私の母は戦時中江田島の山の上のほうに住んでおりその当日のことを時々話してくれます。
子供の頃から平和教育を受けてきたけど、やっぱりまだまだ他人事って思ってる自分がいることに改めて気づきました。
戦争のことを知らない世代だけど、これからは私たちがこういう話を受け継いでいかなかればいけないんだなって思いました。
投稿: Hitomi | 2007年8月 4日 (土) 21時06分
Hitomi様
私も広島生まれ広島育ち、生粋の広島人でございます。一緒ですね。
そして同じく、被爆者でも被爆二世でもありません。
Hitomiさんはお母様が当日のことを話してくださるんですね。
うちは父方が広島なんですが、なんでも戦時中は一家で台湾の方へ行ってたらしく、
原爆投下後広島へ戻ってきたそうです。
私も子供の頃から原爆や戦争について学ぶ機会に恵まれていたにも関わらず、
どこか受け身で・・・正直なところ、時に避けてすらいたように思います。
同じく戦争を知らない世代である原作者こうのさんの、
「遠慮している場合ではない」という言葉にハッとしました。
当時の広島がどんなだったか…
今度勇気を出して父に尋ねてみようかな…と思っています。
投稿: kenko | 2007年8月 5日 (日) 02時32分
こんばんは、はじめまして♪
広島には一度も行ったことがありませんが、
社会人になってから多くの広島県人と知り合いました。
先輩方の中には被爆者手帳をお持ちの方もいらっしゃいました。
そういう方々のお子さんも今20代後半のはず。。
上映中、ずっとはらはらと涙が止まりませんでした。その時の恐怖を思って、、
TBさせて頂きますね。
投稿: kira | 2007年8月 8日 (水) 23時04分
kira様
kiraさん初めまして!
TBコメントありがとうございます。
kiraさんの周りには広島県人がたくさんいらっしゃるんですね。
なんだか勝手に親しみを感じてしまいます(笑)
62年前というと遠い昔のことのようだけど、あの日の恐怖や痛みが今も続いていること、
そしてその恐怖を乗り越えてきた人々の尊さを静かに教えてくれる作品でした。
広島人として、全国のより多くの人に観てもらえたらいいなと思っています。
投稿: kenko | 2007年8月 9日 (木) 21時23分
コメントどうもでした~♪
>満席でしたが、年配のお客さんかなり多し
ボクが観たのは、平日の朝一番の上映だったんですが、おじいちゃん、おばあちゃんって世代の人が多かったです、映画の途中すすり泣く声も聞えてきたりして・・・
投稿: はっち | 2007年8月11日 (土) 22時46分
はっち様
こちらこそコメントありがとうございます。
やはり年配の方が多いんでしょうね。
できれば若い人にこそ観てほしいなとも思ったりするんですが…
投稿: kenko | 2007年8月13日 (月) 00時38分
原爆の話は小学校の授業をはじめ何度も何度も聞いています。自分なりに厳粛な気持ちで受け止めているつもりですが、広島に住んでいてまさに「地続きの現実」であるkenkoさまに比べれば、きっと本当の意味では「わかってない」のだろうな、と思います
そんな身ですけど、この『夕凪の街 桜の国』(原作)は深くココロに突き刺さるお話でした
最初は同人誌で出版されたのにも関らず、少しずつ読者を増やして、いまや海外にまで紹介されている。本当にすごいことだと思います
で、映画は「マンガさえあればいいんでないの?」と感じていたんで、あまり観る気がおきませんでした。ですが先日ちゃんと原作も読んでいた友人が大層誉めていたので、やっぱり観なくちゃならないかな・・・と思いなおしております。ただ、近所まできてくれないかもしれないんですよね・・・ この映画
投稿: SGA屋伍一 | 2007年8月13日 (月) 12時38分
SGA屋伍一様
おはようございます、SGAさま。
お盆は人並みになんだかんだイベントがあってブログほったらかしぎみで
お返事が2日越しになってしまいました…ごめんなさい!
広島に生まれ育つと確かに自然と原爆を身近に感じるようになりますが、
私の場合、子どもの頃に見聞きした原爆という現実はあまりに恐ろしくて
これまであまりちゃんと向き合うことができませんでした。
しかし同じような立場で、同じように「広島人としての不自然さ」を感じていたという
こうのさんの作品はすごく素直に心に響いてきて、
「このままではいけない」と思うことができました。
これはじめは同人誌だったんですねぇ。知らなかった…ほんとスゴイことですね。
原作のクオリティがあまりにも高いので
私もこれ以上の映画になることはないだろうなと思いました。
実際観てみてやはりそう感じる部分もありましたが、
原作を読む機会のないより多くの方にこの物語を知ってもらえるなら
それはそれで意義のあることなんではないかと思っています。
広島の街がとてもキレイに撮られている作品でもあるので、
もしもSGAさんのご近所に来ることがあったらぜひ観ていただきたいです☆
投稿: kenko | 2007年8月15日 (水) 10時16分