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2008年3月

カフカ田舎医者

Einlandarzt

『頭山』の山村浩二最新作は、フランツ・カフカの短編『田舎医者』。
たった20分の作品だけど、その映像体験はまるで、未来永劫続くこの世の果ての地獄のよう。

<あらすじ>

雪が降り積もる夜。田舎医者は隣り村の患者のもとにすぐにも向かわなくてはならなかったが、馬車はあれども馬がいない。困り果て、豚小屋を蹴り開けてみるとそこには見知らぬ2頭の馬がいた。カフカ田舎医者公式サイト

山村浩二作品との出会いは、かなり前に教育テレビの子ども向け番組で偶然に観た『カロとピヨブプト』と『パクシ』というクレイアニメだったと思います。

教育テレビの番組って時々、オトナが観てもハッとするほど面白いものがありますが、そんな中でも『カロとピヨブプト』そして『パクシ』のシュールで奇妙な可愛らしさ、圧倒的なオリジナリティは、一度観たらそう簡単に忘れられるものではありません。

アカデミー賞短編アニメーション部門で、落語を題材にした『頭山』がノミネートされ話題になり、作者が『パクシ』の人だと知ったとき、「あー!あの!flair」とものすごく合点がいったのでした。

『頭山』は、日本的なユーモアと主人公の男の狂気が絶妙なバランスで混ざり合った作品だったと思うのですが、今回の『カフカ田舎医者』は、全体的に激しく狂っている感じ。
そこらへんのホラー映画なんかよりよっぽどコワイんす。ヘタしたらトラウマになりかねないほどにsweat02

とりあえず、百聞は一見にしかずってことで『カフカ田舎医者』の予告編をどうぞ。

山村浩二の描く線の一本一本にみなぎる激しい感情、茂山一家の声、神経を逆撫でするような不穏な電子音(オンド・マルトノとかいう大変珍しい楽器を使っているらしい)・・・
すべての要素が渾然一体となり、相乗効果で濃密かつ完璧な世界を築き上げています。
作品が放つパワーはハンパなく、観る側は誰しもが、死者の目をした真っ黒な荒馬に乗せられ、あっという間に“うねる狂気”の真っただ中へ連れ去られてしまうのです。

また、もともとマンガ家志望だったという山村さん。
私がマンガを好きな主たる理由のひとつって“絵”なのですが、なかでも作者本人が背景までしっかりと描き込んだようなものに強く惹かれます。
なんでかというと、そういう作品には個人の頭の中にある、他者が介入しない純粋なイマジネーションが、ギュッと凝縮したような面白さを感じるからです。
山村さんの作品って正にそんな感じで、彼の中だけにある唯一無二のファニーと狂気に、すっかり圧倒されてしまいました。

今回『カフカ田舎医者』には同時上映の作品が4つあり、『頭山』『校長先生とクジラ』『年をとった鰐』『こどもの形而上学』と盛りだくさんで、約1時間ものあいだ山村浩二の世界をスクリーンで堪能することができました。
どれもこれも本当に良質で素晴らしい作品ばかりですが、中でもフランスの童話が原作だという『年をとった鰐』が良かったです。
『田舎医者』とは違いシンプルな線で描かれた、孤独な鰐の物語。
ピーター・パラカンのナレーションがまたいい味出してました。

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魔法にかけられて

Enchanted

白雪姫、眠れる森の美女、シンデレラ、人魚姫、美女と野獣・・・
ディズニーのおとぎの国のプリンセスが、もしも現代のニューヨークにやってきたら?
かなり前に映画館で予告を観た時から、ディズニーの捨て身と言ってもいいくらいの発想がツボにハマってとても楽しみにしていた作品です。
これディズニーじゃなかったらただのパロディで終わっちゃうのかもしれませんが、本家本元が自ら手掛けるからこそ、面白いんだろうなーと思いました。
ディズニーアニメの伝統をネタにはしていても、けしてバカにしているわけじゃない。
ただし最後の一発芸的な部分もあるので、この後があるのかというと微妙ですがsweat02

<あらすじ>
魔法の国アンダレーシアで暮らすジゼル(エイミー・アダムス)。彼女はある日、エドワード王子(ジェームズ・マースデン)と運命の出会いを果たし、晴れて結婚することに。しかし、王座を奪われることを恐れる王子の継母ナリッサ女王(スーザン・サランドン)の策略により、ジゼルは現代のニューヨークに追放されてしまう。魔法にかけられて公式サイト

お話の途中で突然歌い出したりとか、お友達が動物さんたちだったりとか、ディズニーアニメの世界ではあったりまえの常識なのでそれにツッコむ人なんて当然いないわけだけど、世知辛いリアル現代社会ではそうはいきません。
ここぞという時に歌い出そうものなら「いや、歌はいいから」ってすぐさま中断されるし、NYにおけるプリンセスジゼルの新しいお友達といえば、ハトさんだったりドブネズミさんだったり、極めつけはゴキブリさんだったり・・・shock
世界中の人に愛され続けてきたディズニーアニメの偉大な歴史があるからこそ、そしてそれが私たちの中にしっかりと根付いているからこそ、おおいに笑えるネタの数々。
これを自分でやっちゃうなんて、ディズニーってばずいぶん思いきったもんです。

でもね、いまやハイクオリティなCGアニメに取って代わられた感のある、かつての名作アニメをただパロってるわけじゃないの。どちらかというと讃えているのだ。
だって、飛び出す絵本をモチーフにしたオープニングからして既にワクワクするし、音楽はやっぱり素晴らしいshine
ジゼルのプリンセス的発想や能力が、ニューヨーカーたちに微妙に通用しちゃうところもなんかステキheart
観終えた後は、それこそ魔法をかけられたみたいにハッピーな気分になって、『白雪姫』とか『美女と野獣』とか、もう一度観たくなっちゃいました。
おそるべしディズニー。

今回ジゼル役に大抜擢されたというエイミー・アダムス、エドワード王子役のジェームズ・マースデンのディズニーキャラなりきりぶりも素晴らしかったです。
ほんとにアニメの世界から抜け出てきたよう。ディズニーキャラの動きとか特徴とか、相当な研究&訓練をなさったのではないでしょうか。
で、今回もやっぱりフラレ役のジェームズ・マースデン。
「ジゼルはほんとにこの“自分大好きノーテンキ王子”でいいのだろうか・・・」とこちらが心配になり始めた頃、案の定フラれちゃう王子様ですが、
ものすごーく立ち直りの早い王子様でもあったので、そっちは心配ご無用でした。

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ノーカントリー

Nocountryforoldmen

一昨日久々に時間があって、おっしゃー映画の感想書くどー!!と張り切ってPC立ち上げたのにココログメンテ中だった・・・しくしくweep


<あらすじ>
モス(ジョシュ・ブローリン)は荒野でハンティング中、車が放置され、死体がいくつも転がる麻薬取引の現場で大金を発見し持ち帰るが、組織の非情な殺し屋、シガー(ハピエル・バルデム)に追われる身となってしまう。ノーカントリー公式サイト

そんなわけで今日こそは。
2007年アカデミー作品賞受賞ってことで期待大!の『ノーカントリー』、さっそく観てきましたよーん。

映画監督な兄弟といえば、本作品のコーエン兄弟と『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟。
いっちょまえに映画ブログのようなものをやっておきながら大きな声で言いますが、
どっちも「兄弟」ってだけで一文字も合っていないばかりか作風も全く違うのに、つい最近までどっちがどっちだかあんまりよく分かってなかった私sweat02
ファーゴな方がコーエンで、マンガ及びアニヲタな方がウォシャウスキー・・・なのよね。うんうん。

最近、コーエン兄弟の監督デビュー作『ブラッド・シンプル』を観たのですが、この頃から「おぞましい犯罪に手を染め、みるみる泥沼にハマっていく人間のおかしみ」をリアルに淡々と描く、という独特のスタイルは確立されていたんですね。

今回のもやっぱりそんな感じのお話なのだけど、カウボーイハットがやたらと似合うおじさま、トミー・リー・ジョーンズ演じる老保安官の渋い語りが入ることによって、理解不能な犯罪ばかりがはびこるようになってしまったこの世界の救いのなさが強調され、なんだかどんよりした気分に。
いつもだったら笑えそうなところもあんまり笑えない。全編に漂う息苦しいまでの緊張感と絶望感。
と言ってももちろん映画が気に入らなかったわけではなくてむしろその逆。
暑く乾いた空気がスクリーンのこちら側まで伝わってくるような、荒漠としたテキサスの風景も素晴らしかったです。

へんてこキャラの宝庫でもあるコーエン作品ですが、今回のイチバンはなんといっても、すべてを超越した殺人鬼アントン・シガー。
ハピエル・バルデムのサイコーに濃いお顔に、七三(ろくよん?)分けの絶妙なマッシュルームヘアってだけでも十分過ぎるほどのインパクトなのに、
武器は圧縮した空気がホースの先から出る酸素ボンベだったり、すごく大事なこともコインの裏表で決めようとしたり・・・
自らの肉体が傷つくことをものともせず、あくまでも冷静に、彼だけのルールに従って行動する姿はあまりにも不気味。
酸素ボンベが使われるたび、びくぅっsign03ってなっちゃった小心者な私は、シガーにだけは何があっても出会いたくないです。賭けに絶対負ける自信があるからsweat02

しかしそんな恐ろしいシガーすら、「この人なんでこんな生き方しかできなくなってしまったんだろう」と考えると、最終的にはちょっと哀れに思えてしまった。
珍しくこの世のルールを守ったとたん、あっという間に裏切られてしまうシガー。
老保安官が嘆く、無情な世界を象徴するかのような存在だけれど、傷ついた体を引きずって歩く痛々しい後ろ姿は、まるでこの世の不条理に立ち向かっているかのようにも見えました。

劇中ドラマを盛り立てるような音楽はほとんど(いや全く?)なかったような気がするけど、エンドクレジットで流れた曲は余韻をじわじわと引き立てるようないい曲だったなぁ。

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スポーツ大佐

昨年5月にニートな主婦生活に突入して以来、自由気ままにもほどがある暮らしぶりだった私ですが、
実は最近おもーーーい腰を上げ、ようやっと社会復帰いたしました。

もともとおうちに引きこもることが苦でもなんでもない私。
主婦業に専念するのもやってみるとなかなかに楽しいし、好きな映画は好きな時間に好きなだけ観られるし・・・はっきり言って至福のぬるま湯に浸かりっぱなしの状態sweat02

もう全然働きたくなんてなかったんだけど、どこまでも自分に甘い私にしては珍しく、「このままじゃいかんっ」と怠け心に鞭打ってみることにthunder

もともとユルめの脳みそが、長いことお休みしたおかげでさらにトロットロにとろけちゃってる感はいなめませんが、なんとかかんとか頑張っております・・・

でもやっぱりブログの更新が滞っちゃう。観たい映画もどんどんたまっていくしー

とりあえず、まっっったく脈絡はないけんど、だいっすきなマンガ『団地ともお』より、ともお達が愛してやまない劇中マンガ『スポーツ大佐』のアニメ版(エネーチケー『アニ・クリ』より)が観ててあまりにも和むので貼っておきます。。。

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ライラの冒険 黄金の羅針盤

Thegoldencompass
なんかいろいろややこしいらしい、と風のウワサで耳にしていたので、「よぉーし、集中するぞぅ」と気合いを入れて観に行きました。
が・・・うーん、確かにいろんな勢力が入り乱れているわりに、それぞれの目的とするところが何なのかイマイチはっきりせず、展開はやたらスピーディで分かりにくいですねーsweat02
ま、三部作の一作目ってことで、こんな感じでいいのかな。

<あらすじ>

我々の世界と似ているが、違う部分も多くあるパラレルワールドの英国オックスフォード。その世界の人々の魂は体の外にあり、動物の姿をした守護精霊として片時もそばを離れることなく行動する。パンタライモンというダイモンを持つ少女ライラ(ダコタ・ブルー・リチャーズ)は幼い頃に両親を亡くしているが、叔父であるアスリエル卿(ダニエル・クレイグ)に育てられ、大学の寮で暮らしている。
ある日アスリエル卿は、謎の物質ダストの秘密を解明するべく、教権の反対を押し切り北極へ。どうしても叔父について行きたいライラは、上流社会の実力者コールター夫人(ニコール・キッドマン)の助けで旅立つことに。
ライラの冒険 黄金の羅針盤公式サイト

語り口は急ぎ足で雑な印象でも、「人間の傍らに、動物の姿をした守護精霊が常に寄り添っている」という独特の設定はやっぱりものすごく魅力的shine
なんせ毛の生えた動物ならなんでも萌えてしまう癖があるもんで・・・ほとんどのシーンがわくわく動物ランド状態ってそりゃ楽しいに決まってるさぁ〜たとえすべてがCGだとしてもね。
しかもネコ科の動物率高しcat
なんと言っても主人公ライラのダイモン・パンのヤマネコバージョンが超キュートですheart
セクシーなダニエル・クレイグ(めっちゃ好き)に、気高く美しいユキヒョウのダイモンってのもいいね〜お似合い。

公式サイトで自分のダイモンを判定できるってんで、さっそくやってみたらこんなん出ましたー

Daimon
Daimon2

ネズミちゃん・・・カワイイけど、ネコ科の動物でないことがなんか不満なのだったthunder
ちなみにわたくし干支はウサギ(って年がばれるがな)、以前流行った動物占いではペガサスでした。

キャラクターは動物含めみな個性豊かで、主人公ライラがけしていい子ちゃんなんかではなく、何かと反抗的なところとか好きなんですが、なんと言っても私が一番気に入ったのはこのお方・・・

イオレク・バーニソンsign03

Kuma酒もってこーいbottle

こんなやさぐれた飲んだくれのシロクマ初めて見たsweat02
落ちぶれて酒場の裏で働かされていますが、こう見えてもクマ界の王子様なのです。
ケンカ上等オトコの中のオトコなりpunch
彼をおもてなしする時は、バケツいっぱいのウイスキーで、名前を呼ぶ時は、「イオレク・バーニソンっ!!」と、フルネームをややキレ気味に叫んでみてください。
守護精霊としての動物とは別物?なんだろうけど、なぜかクマだけ、クマ王国を築き上げるほどに自立してるってのも面白いなーと思いました。

飛行船などの乗り物のデザインもGOOD。何の力で動いてんのか分かんないところがまたイイですね。
いろいろ謎だらけなまま終わってしまったので、早く続きが観たいですmovie

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いつか眠りにつく前に

Evening

うちの母と一緒に観てまいりました。
観終わるなり母に言われた言葉・・・「あんたにはまだ分かんないでしょ」
えぇーsweat02
うーん。確かに・・・すごくいい映画だったなぁーと思うけど、人生経験の未熟な私にはまだまだ理解仕切れない部分もいっぱいあったのかもしれません。

<あらすじ>

長女コンスタンス(ナターシャ・リチャードソン)と次女ニナ(トニ・コレット)に見守られ、人生の幕を閉じようとしているアン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)。死の床の母が口にする“ハリス”という聞き慣れない男の名前に娘たちは戸惑う。40数年前、歌手を目指していたアン(クレア・デインズ)は、親友ライラ(メイミー・ガマー)のブライズメイドを務めるためやってきた海辺の別荘で、ライラの初恋相手でもあるハリス(パトリック・ウィルソン)と出会い恋に落ちる。いつか眠りにつく前に公式サイト

これは母と娘の物語で、死の床にある女性が自らの人生を振り返る物語。あと女の友情の物語で、姉妹の物語でもあるかな?
観る側・・・特に女性は、母、娘、そして女として、登場人物それぞれの視点を自らの人生に重ね合わせ、深く共感することのできる映画なんじゃないかと思う。

いつの間にやら結婚4年目に突入しちゃったものの、まだ“母”ではない私は、やはりいつまでたっても“娘”でしかなく(年齢だけは容赦なく重ねていってるわけですが)、
ナターシャ・リチャードソンの「母親になってようやくママの気持ちが分かったの」というセリフを、ほんとの意味で受け止められる日が来るといいなぁと思う今日この頃です。

ま、それはさておき。
『めぐりあう時間たち』の原作者マイケル・カニンガムが製作と脚本に名を連ねていることが、この映画を観たいと思った主な理由のひとつ。
実は『めぐりあう〜』はとても好きな作品で。
本作も、現在と過去を行ったりきたりする構成や、登場人物たちの繊細な心理描写が、なるほどめぐりあってるなと思いました。

監督のラホス・コルタイは、長年多くの作品で撮影を務めてきた方とのことで(代表作は『マレーナ』『海の上のピアニスト』など)、映像は総じてとても上品で静かな印象。
特に過去のエピソードにおける海辺の風景、そこに佇む別荘の美しいことshine
ナチュラルなインテリアも素敵heart
でもそんな優しい幸福感に満ちた場所で、言葉にならない不幸が起きてしまうわけなんだけど・・・

ヴァネッサ・レッドグレーヴとナターシャ・リチャードソン、メリル・ストリープとメイミー・ガマーというリアル母娘共演も話題ですね。
ママにそっっっくりなメイミー・ガマーが、メリルの若き日を演じるってナイスなキャスティング。
実の母娘であることを知らなかったうちの母は、「メリル・ストリープが若返りメイク&CG処理で演じてるのかと思った」などとすっとぼけたことをおっしゃってました・・・んなわけないじゃんsign03
いやでもそれくらいよく似てるってことです・・・もはやグレン・クローズとメリル・ストリープまでもが血縁関係であるかのように思えてきました。(似てない?)

また“おばあちゃん”にやたら弱い私は、ヴァネッサ・レッドグレーヴが出てくるたび条件反射的に滝のように涙がcrying
夢と現の間で彼女が体験する、まるで魔法のようにファンタジックなエピソードの数々がすごく良かったなぁ。
ライラがお見舞いに来て、あっという間に娘時代にタイムスリップしたみたいにベッドで語り合うシーンと、
クレア・デインズ演じる若き日のアンが、キッチン放ったらかしで娘たちに歌をうたうシーンもジンときた・・・
心に残る名シーンがいっぱい。そんな映画でしたconfident

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