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カフカ田舎医者

Einlandarzt

『頭山』の山村浩二最新作は、フランツ・カフカの短編『田舎医者』。
たった20分の作品だけど、その映像体験はまるで、未来永劫続くこの世の果ての地獄のよう。

<あらすじ>

雪が降り積もる夜。田舎医者は隣り村の患者のもとにすぐにも向かわなくてはならなかったが、馬車はあれども馬がいない。困り果て、豚小屋を蹴り開けてみるとそこには見知らぬ2頭の馬がいた。カフカ田舎医者公式サイト

山村浩二作品との出会いは、かなり前に教育テレビの子ども向け番組で偶然に観た『カロとピヨブプト』と『パクシ』というクレイアニメだったと思います。

教育テレビの番組って時々、オトナが観てもハッとするほど面白いものがありますが、そんな中でも『カロとピヨブプト』そして『パクシ』のシュールで奇妙な可愛らしさ、圧倒的なオリジナリティは、一度観たらそう簡単に忘れられるものではありません。

アカデミー賞短編アニメーション部門で、落語を題材にした『頭山』がノミネートされ話題になり、作者が『パクシ』の人だと知ったとき、「あー!あの!flair」とものすごく合点がいったのでした。

『頭山』は、日本的なユーモアと主人公の男の狂気が絶妙なバランスで混ざり合った作品だったと思うのですが、今回の『カフカ田舎医者』は、全体的に激しく狂っている感じ。
そこらへんのホラー映画なんかよりよっぽどコワイんす。ヘタしたらトラウマになりかねないほどにsweat02

とりあえず、百聞は一見にしかずってことで『カフカ田舎医者』の予告編をどうぞ。

山村浩二の描く線の一本一本にみなぎる激しい感情、茂山一家の声、神経を逆撫でするような不穏な電子音(オンド・マルトノとかいう大変珍しい楽器を使っているらしい)・・・
すべての要素が渾然一体となり、相乗効果で濃密かつ完璧な世界を築き上げています。
作品が放つパワーはハンパなく、観る側は誰しもが、死者の目をした真っ黒な荒馬に乗せられ、あっという間に“うねる狂気”の真っただ中へ連れ去られてしまうのです。

また、もともとマンガ家志望だったという山村さん。
私がマンガを好きな主たる理由のひとつって“絵”なのですが、なかでも作者本人が背景までしっかりと描き込んだようなものに強く惹かれます。
なんでかというと、そういう作品には個人の頭の中にある、他者が介入しない純粋なイマジネーションが、ギュッと凝縮したような面白さを感じるからです。
山村さんの作品って正にそんな感じで、彼の中だけにある唯一無二のファニーと狂気に、すっかり圧倒されてしまいました。

今回『カフカ田舎医者』には同時上映の作品が4つあり、『頭山』『校長先生とクジラ』『年をとった鰐』『こどもの形而上学』と盛りだくさんで、約1時間ものあいだ山村浩二の世界をスクリーンで堪能することができました。
どれもこれも本当に良質で素晴らしい作品ばかりですが、中でもフランスの童話が原作だという『年をとった鰐』が良かったです。
『田舎医者』とは違いシンプルな線で描かれた、孤独な鰐の物語。
ピーター・パラカンのナレーションがまたいい味出してました。

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コメント

この作家さんに興味はあったのですが
実際に作品を鑑賞する機会がなく
気になっていました。「パクシ」の方
だったんですか!あの独特なキャラと
音楽、あのテーマソング・・・。
娘が幼稚園の頃だから随分前の放映だったのに忘れられません。

投稿: 奈良の亀母 | 2008年3月31日 (月) 21時27分

奈良の亀母様

私も山村さんの作品を、こうして映画館でちゃんと
観るのは初めてです。
以前流行った?「わにのジェイク」ってのも
山村さんだったみたいですが、そのときは気付かずsweat02

亀母さんパクシをご存知ですか!
娘さんと一緒にご覧になっていたんですね。
なんとも形容しがたいキャラと音楽notes
ゆるーい感じなんだけどインパクトありますよねぇ〜
DVD出てるみたいだし買っちゃおうかしら。

投稿: kenko | 2008年4月 1日 (火) 23時32分

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