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グラン・トリノ

Grantorino

2月に公開された『チェンジリング』がまだ記憶に新しい、名匠イーストウッドの最新作。
今回は久々に、役者として出演もされてます。
「監督業に専念するつもりだったけど、脚本を読んで頑固な元軍人という役に興味を持った」と本人も言ってるだけあって、ウォルト・コワルスキーは今のクリントだからこそ演じられるハマリ役。

<あらすじ>

妻に先立たれた孤独な老人、ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)。
息子家族にも疎まれる頑固オヤジであるウォルトの楽しみは、ピカピカの72年製グラントリノを、ビール片手に眺めることぐらいだった。
ある日、隣りに住むモン族の少年と不良グループが庭でもめているのを目撃し、彼らを追い払うべくライフルを手に取るが、ウォルトの意に反し結果として隣家の少年タオ(ビー・ヴァン)を助けることに。

グラン・トリノ 公式サイト

朝鮮戦争帰還兵で差別主義者、実の息子にすら「50年代から抜け出していない」と疎まれるウォルトは、孫のへそピアス、若い神父、アジア系のお隣りさん、とにかく世の中のすべてが気に入らないようで、怒りが頂点に達すると「ガルル〜annoy」とまるでワンコのように唸り、呆れるのを通り越して感心してしまうくらいの毒舌で周囲を威嚇しまくる超!頑固じじぃ。

なんともかわいげのない爺さんなのだけど、ふとした出来事から彼がただのひねくれ者ではなく、一本筋の通った気骨ある人物であることはわりとすぐに分かります。
「口は悪いけど良い人なんだ」そう思えた瞬間から、彼の豊富すぎる差別用語にすら愛が感じられるようになるという不思議。
頑固じじぃであることは間違いないものの、ウォルト・コワルスキーは彼なりの確固とした哲学を持っていて、気が合えば実はけっこうオモロイ爺さんだったのでした。

そんなウォルトがとっても大事に車庫にしまっているのが、72年フォード社製のグラントリノ。
(グラントリノって車の名前だったのねsweat02
日々ピカピカに磨き上げ整備しているおかげで、まるで新車のような輝きを放っていて、へそ出しギャルや近所のチンピラ共も欲しがるくらいのイカしたヴィンテージカーです。
この車は古き良きアメリカの象徴であり、ウォルトの気高い魂そのものでもある。
隣りに住むモン族のタオが、ワルの従兄弟にそそのかされてグラントリノを盗もうとしたことがキッカケとなり、ウォルトとお隣りさんとの奇妙な交流が始まるのですが・・・

『チェンジリング』の重苦しさに比べると、全体的にさらりとした印象。
どちらかというとコメディタッチだし。(てゆーかかなり笑ったcoldsweats01
上映時間も117分とちょうど良く、語り口の分かりやすさやシンプルなストーリー、“グラントリノ”という小道具の使い方の巧さとか、映画とはこうあるべし!というお手本のようだと思いました。

しかしこの気取らない肩の力の抜けたスタイルだからこそ、心の奥深くにじんわり、そして確実に届く力強いメッセージがあります。
ウォルトの渋い歌声と開放的な風景が心地良いエンドロールの間、頬を伝う涙を止めることはできませんでしたweep

ウォルトが最後にとった行動は、けして誰にでもできることではなく、それが最良だと認めざるを得ないものだけれど、やっぱりすごく悲しかったです。
でも「自分が関わったことにケリをつけた」この行動によって、ウォルトの魂は、ただ怯えて暮らすしかなかった若者に確実に受け継がれ、これ以上ないくらいの形で彼の進むべき方向を示してくれました。
ラストシーンのタオの自信に満ちた表情を見ていると、彼の中に息づく信念が、彼の未来をこの先もずっと守ってくれるんだと確信できて、なんだかすごく心強かった。
こんなカッコイイ大人がいてくれたら、子どもはきっと間違った道には進まないのだ。

イーストウッド監督、78歳にして冴えわたる才能は尽きることがなく。
毎回言っててしつこいようだけど、やっぱスゴすぎ。
既に次回作に取りかかっておられるらしく、今後も楽しみでなりません。

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映画」カテゴリの記事

コメント

こんにちは!
これはとっても心に残る素晴らしい作品でしたね!
すべての人に観てもらいたい,そんな作品です。
あんな方法でケリをつけたウォルト・・・すごすぎます。
哀しいけれど,確かにあれが最良の方法で
彼の生き方は若者タオの心にずっと引き継がれてゆくのでしょうね。
愛車のグラン・トリノとともに・・・・。
でも私も,「グラントリノって車の名前かぁ!」と思ったクチです。
車なんて興味ないもん~~~
わかる人にはすごくわかるんでしょうね,あの車の価値。
それにしても,イーストウッド,やっぱりすごい!
年を取るに従ってますます才能が冴えわたってきましたね。
これまで彼の作品はどうも重くて・・・と敬遠しがちだった人も
この作品で彼を大好きになる場合もあるかも!

投稿: なな | 2009年5月 9日 (土) 16時38分

きのうこっちにもコメントしようとして、書いてる途中で寝ちゃいました。あははcoldsweats01

考えてみれば不思議ですよね。わたしらアジア人のこと「コメ食い虫」とか呼んでくれちゃってるくせに、ブロガーさんたちの感想読むとどなたもこなたもウォルトさんへの愛に満ち溢れまくってて
もしご本人が読んだら渋い顔をして「勘弁してくれ」ということでしょうね

でもkenkoさん、『硫黄島からの手紙』の記事でおっしゃってましたよね
監督としてのイーストウッドはウォルトとは対照的にすんごい穏やかな方で「俳優を使う時にはその人を全面的に信頼し、細かく演技をつけることもしなければ演技が気に入らないと言う理由で何度も撮り直すようなこともしない」って
そんなところにまたしても「さすがイーストウッド!」と畏れ入ってしまいます

『チェンジリング』と並行して(!)こんなド傑作を作ってしまうというところがまたすごいです。映画監督の中には「自信なくすから、じいさんはよ引退してくれんかな」と思ってる人もいるかもしれませんね(笑)

投稿: SGA屋伍一 | 2009年5月 9日 (土) 19時46分

なな様

コメントありがとうございます♪

これはほんとにほんとに、素晴らしい作品でしたねぇ〜shine
久々にいい映画観たなぁ〜って感じ。

>「グラントリノって車の名前かぁ!」と思ったクチです

ななさんもcoldsweats01
グラントリノっていったいどういう意味?って
映画始まってからもしばらく考えてましたからsweat02
車には興味ないし、ましてやアメ車なんてほとんど分かんないもーん。
普段コンパクトカーしか運転しない私。
どんなに価値ある車だとしても、あんなデカイ車乗りこなせんです。

最近のイーストウッド映画は特に重たいものが多いけど、
この映画なら苦手な人にもおすすめできますね♪

投稿: kenko | 2009年5月11日 (月) 20時53分

SGA屋伍一様

私もコメント書いてる途中で睡魔に耐えられなくなったり、
ダンナが帰宅して中断せざるをえなかったり・・・よくありますcoldsweats01

もはやウォルトへの愛に満ち溢れちゃってますから、
渋い顔をして「勘弁してくれ」← こんなセリフ言われるの想像するだけでも胸キュンなのですheart

>「俳優を使う時にはその人を全面的に信頼し、細かく演技をつけることもしなければ
演技が気に入らないと言う理由で何度も撮り直すようなこともしない」

そうそう!そうです。
私そんなこと書いてましたね。引用してくださってありがとうございます。
モン族について描くなら、俳優もちゃんとモン族の者でないと・・・ということで
ほとんど演技経験のないモン族出身の役者さんを多数起用したらしいですが、
タオやスーはじめ、自然な演技が観ていてとても心地良かったのも
イーストウッドゆえなんではと思ってしまいます。
映画の中で描かれていたような温かい信頼関係を、スタッフや役者さんたちとの間にも
築きながら撮影されてるんでしょうね。

「チェンジリング」もスゴイ映画だったけど、今回はこちらの方がより好みだったかもshine

投稿: kenko | 2009年5月11日 (月) 21時20分

こんばんは~moon1
すっかり暖かくなりましたねぇ~お元気ですか?

これはいい映画でしたね~
わりとベタな展開だったので、最後も予想がついたのですが、、、スーちゃんが酷い目に遭ったくらいから泣きのモードになってしまいました。
で、、、エンドロール後もボーっとしちゃったなぁ~

ウォルトが愛すべき偏屈じいさんに思えたのもイーストウッドの力でしょうねぇ~
一つ一つの仕草に円熟した味を感じました。

投稿: 由香 | 2009年5月12日 (火) 23時56分

由香様

こんばんは!
暖かくなりましたねぇ〜。昼間は暑いくらいですsweat01
ちょっと前まで鼻風邪を引いてましたが、今は元気でやってます。

いい映画でしたねshine
私はけっこうギリギリまで、結末が分からなくてハラハラしてたんですがcoldsweats01
スーが酷い目にあった時は、ショックのあまり心臓止まりそうでした。

ウォルトは今のイーストウッドにピッタリの役で、彼以外には考えられないって感じ。
自分で自分のことをすごく客観的に理解してるんだろうなぁと思いました。
怒る時ちょっと大げさに唸ったりするのが可笑しかったです(笑)

投稿: kenko | 2009年5月13日 (水) 20時04分

こんにちわー!
そうそう毎回「スゴイ」って言ってしまう監督にホントになってしまって
ますね。他にそこまでの人最近いないからイーストウッドってもはや
伝説で、それをリアルタイムで見れているのかもしれませんね。
なんといいますか、ヘンな言葉ですけど「侠気」ムンムンの後半で
爺さんの話なのにカッコイイと思わせるのはすごいです。
あの疎遠な息子さん、あの親父の息子なのに、あんなに普通の中年男になる
ってのがちょっと現実的だなぁとは思いましたが。

投稿: kazupon | 2009年5月17日 (日) 09時00分

kazupon様

こんにちは♪

そっか、私たちは今、イーストウッド伝説をリアルタイムで目撃中なのかも。
将来若いもんに「この映画を観ろ!」とか言ってしまいそうです。

>「侠気」ムンムン

確かに。そんな感じ(笑)
爺さんの話で悲しい結末なのに、観終えたあとの気持ちは「悲しい」よりも「カッコイイ」の方が強かったです。
実の息子とは、お互い思いやる気持ちが全くないわけではないはず・・・と思いたいんですけど、
長い年月の間に今さらどうにもならない壁ができちゃったのかな。
息子はまだしも、あの孫娘がいただけないなと思いましたcoldsweats01

投稿: kenko | 2009年5月17日 (日) 11時31分

kenkoさん♪こんにちは~
この記事と関係ないことで恐縮ですが、先日『暗闇坂の人喰いの木』を読んだんです。
以前kenkoさんにオススメ頂きましたよね~(覚えてない?・笑)
感想を書いたのですが、kenkoさんのお名前を載せさせて下さいね。アップは1週間くらい先ですが、、、せっかちなので今ご連絡に上がりました~ヨロシクheart04

投稿: 由香 | 2009年6月 3日 (水) 16時36分

由香様

おー!『暗闇坂の人喰いの木』を読まれたんですね♪
おすすめしたの覚えてますよ〜(笑)
由香さんの記事に名前を載せていただけるなんて光栄でございますshine
1週間後のUP、楽しみにしてまーすheart

投稿: kenko | 2009年6月 3日 (水) 20時27分

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