チェイサー
けっこう前に観たんですがようやく。
何を隠そう、韓国映画を映画館でちゃんと観たのはこれが初めて。
一時期の韓流ブームに乗り切れないまま今日に至った私。食わず嫌いってやつです。
DVDやテレビで観たのも片手で数えられるほどしかないし。
(『グエムル』『オールドボーイ』『箪笥』くらい)
<あらすじ>
風俗店を経営している元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)。
店の女の子たちが相次いで失踪するという事態に困り果てていたが、失踪した女の子たちが最後に会ったと思われる客の電話番号がすべて一致することに気付く。
それは直前に送り出したデリヘル嬢ミジン(ソ・ヨンヒ)の客の番号とも一致していた。
やがてミジンとも連絡がとれなくなってしまう。
心配したジュンホはミジンの後を追った先で不審な男に遭遇、ジュンホはその男・ヨンミン(ハ・ジョンウ)が例の客だと確信する。
格闘の末ジュンホはヨンミンを捕えるが、騒ぎに駆けつけた警官に二人とも連行されてしまう。
(チェイサー 公式サイト)
いやー、むちゃくちゃ見応えありました!
韓国犯罪史上最悪と言われた連続猟奇殺人<ユ・ヨンチョル事件>をモチーフにしているという本作。
ちょっと調べただけではどこまでが真実か分かりませんが、ヨンチョルは金持ちの老人や風俗嬢など21人を殺害、バラバラにして遺棄したり、内蔵の一部を食したりしたらしい。(えー)
ヨンチョルの育った家庭は貧しく、父親に酷い虐待を受けていたとか、美術の才能があったのに色覚障害のため美術学校に進めなかったとか(それであの壁の絵か)いろいろあるみたいなんだけど、劇中ではヨンチョル=ヨンミンのそうした人物像や過去については、あえて描かなかったようです。
それは観る側がヨンミンにヘンな感情移入をしてしまうのを避けるためなのだろうと思うし、ヨンチョル事件がモデルではあるけれど、殺人鬼の内面を掘り下げることが目的じゃないからだと思う。
ヨンミンを取り巻く様々な不幸や不運が彼を暗黒の道へ進ませたのだろうか・・・なんて勝手な想像は、そういうのを知っていようといまいとしちゃうわけだし。
ヨンミンは絶対的な悪。徹底して不気味で得体の知れない男として描くことによって、恐ろしさに拍車がかかってると思いました。
そしてそれに対する人間の良心がジュンホ。
ジュンホだって、どちらかというとダークサイドに身をやつして生きてきた人間なわけだけど、母親が行方不明でひとりぼっちの女の子が目の前にいた時、ほっとけないのが人情。
何度殺しても殺し足りないほど憎い相手ですら、トドメを刺すのを躊躇うのが人間。なのだと信じたい。
ジュンホ対ヨンミン、追う者と追われる者の死闘は、けしてスマートとは言えないところがリアルでした。
殺人鬼は最初からヨンミンだと分かってて、犯人探し的要素はないにもかかわらずこの緊迫感。
しかも早い段階でヤツは身柄を拘束され、あっさり大量殺人を自白します。
それなのに!!
警察の無能っぷりにはほんっと腹立った。
唯一期待できるのが元刑事のジュンホなんだけど、ダメ過ぎる現役刑事どもがジュンホの足を引っ張りまくるのよ〜
ウンコ市長がなんぼのもんじゃい!!
行方不明になったのがデリヘル嬢じゃなかったら、警察はもっと真面目に事件の捜査に取り組んだのでしょうか。
警察内部の腐敗や怠慢に対する批判はかなり感じました。
結局、なんとミジンは自分の力だけで恐怖の館から脱出。
助かったじゃん!良かった!とこちらに安心させたところであの展開・・・
ヨンミンが金槌を振り上げた瞬間ですら、わたしゃ信じてましたよ。
このいや〜な感じ・・・・・・まるでハネケじゃん
ハネケならここで終わってたかもしれない。
そしてここで終わってたら、煮え滾る怒りをどこにぶつけりゃいいんじゃあー!!と映画館で暴れてたかもしれないです。
でもそうはならないんですね。ちゃんと復讐篇がある。
この熱さが韓国なのかなぁ・・・と、ちょっと思いました。
ヨンミン役の人もジュンホ役の人も、けして有名な役者さんではないみたいですが怪演、熱演で圧倒されました。
ヨンミンの何かが完全に壊れちゃってる感じ、白ブリーフ姿が忘れられません・・・
今さらですがこれを機に、韓国映画ももっと観てみたいです。
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コメント
そっか~ ハネケってこういう感じなのか~(笑)
わたしも終盤は何度か思いましたよ~ 「頼むからここで終ってくれるな!」って。ラストシーンがああいう感じでホントーに良かったです
それにしても、ポン引きとかデリヘルとかを題材にして、ここまで堂々たるアクション映画を作りあげるのってなんかすごいですよね
いまなんでか強く思い出されるのは雑貨屋のおばちゃん。おばちゃん・・・ もうちょっと警戒とかしようよ・・・
笑えるような腹立たしいような、物悲しいような
わたしもそんなに韓国映画は見てないですけど、見るきっかけになったのは『シュリ』ですね。南北分断という問題を描けるのは、やはり韓国ならでは。あと去年は『D-WARS』というすごいのがありました・・・
投稿: SGA屋伍一 | 2009年8月26日 (水) 21時26分
そうですね~
ヒロインが殺されちゃってその場面で「どーだ,バッドエンドだろう~」と
ほくそ笑みながら終わりそうですね・・・ハネケなら。
この映画はそのあとにちゃんと犯人を料理してくれてるし
(それが実話なのでそう来るのは当たり前なのですが)
ジュンホの人間性の回復という救いも用意してくれてるところが
ハネケ作品にはない「良心」や「救い」を感じました。
韓国ドラマは誰にでもはお勧めできませんが
韓国映画はお勧めできますよ。
凄い作品多いです。
「殺人の追憶」とか「オアシス」とか「シルミド」とかお勧めです。
最近の韓国映画ちょっと勢いがないのですが
久々に素晴らしい作品が出た~!って感じです,この「チェイサー」。
投稿: なな | 2009年8月27日 (木) 20時25分
SGA屋伍一様
ハネケさんの方はもっと淡々としてますが、救いのない展開という点がぽいなーと思いました。
ああいう感じのラストもけして用意してくれないし
>ポン引きとかデリヘルとかを題材にして、ここまで堂々たるアクション映画を作りあげるのってなんかすごい
そうですねー。日本だとVシネっぽくなっちゃいそうだし!?
日本にはない熱さを感じました。
雑貨屋のおばちゃんには参った
いたしかたないとは思うんですけどね・・・
おばちゃんがもうちょっと勘のいい人であってくれたらなぁ。
「シュリ」も当時話題でしたよね。今さらだけど観てみようかな。
いちど韓流好きの友人に誘われてグォン・サンウの「恋する神父」を観に行きかけたことならあるんですけど、仕事が終わらなくて結局行かれず、それ以来韓国映画を観る機会を失しておりました。
DWARSも韓国だったんだ?タイトルだけは目にしてたけどノーチェックだったわ。
今ちょっと調べてみましたがなんだか散々な言われようですね
これはこれで興味あるかも?
投稿: kenko | 2009年8月28日 (金) 11時11分
なな様
ヒロインが殺されたところで終わってしまいそうな雰囲気もあったんで

って感じだったんですけど
えええーーー!!!
続きがあってほんとうに良かったです。
良心や救いが微塵も感じられないハネケさんの映画ってやっぱ独特だなーと
改めて思ったりして。。。
韓国ドラマも続けてみればそれなりにハマるんだろうなーと思うんですけどね。
うちの母なんてずーっと観てるし
でもやっぱ観るなら硬派なのを観たいな。
「殺人の追憶」「オアシス」「シルミド」どれも観てみたいです!!
「殺人の追憶」は近々観る予定♪
投稿: kenko | 2009年8月28日 (金) 11時49分
こちらにも。。。
面白いって言ったらへんなのかもだけど、(実話だけに、、、)
すごい怖い話でしたよね!
あそこでなんで捕まえとかないの!!と地団駄?踏みたくなりました(笑)
ほんと、アメリカの警察もダメだけど
>警察内部の腐敗や怠慢に対する批判はかなり感じました
酷いですよね〜。
投稿: mig | 2009年9月12日 (土) 01時40分
mig様
こちらにもありがとうございます!!
この映画、うちの方では公開時期が遅くてちょっと遠慮しちゃってました
実話だけに面白がっちゃいけないのかもだけど
むちゃくちゃ見応えのある作品でした。
そんじょそこらのホラーよりなんぼか怖かった・・・
地団駄踏みたくなるシーンがいっぱいありましたね〜
雑貨屋の前で張ってた女刑事とかアホか!!!と言いたくなりました。。。
投稿: kenko | 2009年9月13日 (日) 13時27分