イングロリアス・バスターズ
前作『グラインドハウス』は、その年の個人的ベスト2位に選んだくらい興奮した映画でしたけども、今回のはあそこまでやりたい放題に遊んではいなくて、わりときちんと物語を積み上げている印象。
とはいえタランティーノなので、もちろん型にははまってません。
約2時間半の映画は全部で5章に分かれており、各章でタラちゃん印の会話劇が延々と続いたりするわけですが、これがもうむちゃくちゃスリリングで全然飽きない。
静かな緊迫感と、一気に爆発するバイオレンス。×5!!って感じ。
満足度高し!さすがタランティーノ。面白かったです
<あらすじ>
1941年ナチス占領下のフランスで、ユダヤの少女ショシャナ(メラニー・ロラン)はユダヤハンターと呼ばれ恐れられるランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)に家族を殺されるが、たった一人逃げのびる。
3年後ショシャナは名前を変え、パリで映画館の館主となり復讐の機会を待っていた。
同じ頃、アルド・レイン中尉(ブラット・ピット)率いるユダヤ系アメリカ人の秘密部隊イングロリアス・バスターズはフランスに潜伏し、ナチスを次々と惨殺してドイツ軍を震え上がらせていた。
そんなある日、ショシャナの映画館でナチスのプロパガンダ映画『英雄の誇り』のプレミア上映が行われることに。
ヒトラーはじめナチスの高官が集まるこの夜に復讐を果たそうと、ショシャナ、バスターズそれぞれに行動を開始するが・・・
1976年のイタリア映画『地獄のバスターズ(原題:THE INGLORIOUS BASTARDS)』を下敷きにしているという本作。
タイトルそのまんまで設定も似ているらしいけど、あくまで下敷きでありリメイクではないところがタラちゃんらしい。
愛してやまないB級映画のテイストを取り込んで、自分だけのオリジナルを作り上げる天才だものね。
どんなに売れっ子になったってオタク心を忘れないタランティーノ映画に、ハリウッドの王道を行くブラピが出演って最初は意外に思ったけど、これがまた見事にハマってました。
『バーン・アフター・リーディング』のチャドといい、イメージを裏切るアホキャラを嬉々として演じるブラピってイイよねぇ。
スター中のスターである自分が演じるからこそ面白いってちゃんと分かってるんでしょうね。
そんなブラピ含めキャラの立ちまくった人物だらけの中、誰よりも鮮烈な印象を残すのは、なんといってもランダ大佐を演じたクリストフ・ヴァルツ。
カンヌで絶賛も激しく納得の怪演!
類い稀なる勘の良さと、目をつけた人物を言葉巧みに追いつめてゆく頭の良さは、ほとんど古畑任三郎レベルで(ちょっと前まで再放送を観てたもんで)、憎むべき相手ではありますがその鮮やかすぎる仕事ぶりは敵ながらアッパレ。
キャラクター自体が魅力的だとしても、この役を演じ切ったヴァルツさんはスゴイ。
憎たらしさ・・・というか鬱陶しさで言えば、ナチスの英雄君の方がなんぼかウザかったです。
ショシャナ役メラニー・ロランと、二重スパイの女優ハマーシュマルク役ダイアン・クルーガーも良かった。
二人のヒロインのクラシカルな美貌が、作品に気品を与えております。
復讐を前にドレスアップするショシャナの美しいこと。しかも曲が『キャットピープル』だし!
ここでこの曲をもってくるとは、あいかわらず曲選びのセンスよすぎ。
ダイアン・クルーガーのヒール型ギブスにも萌えますた。
あと忘れちゃいけないイーライ・ロス。おいしい役を楽しそうに演じてましたね。
フランス語、ドイツ語、英語、さらにイタリア語まで登場しますが、無駄に国際的なわけじゃなく、それらの言語がサスペンスに作用してるところが面白い。
ちゃんと各国の俳優を起用しているのにはこだわりを感じるし、微妙なアクセントまで聞き分けられなくても、今しゃべっているのが何語かさえ把握できれば楽しめる仕掛け。
イタリア人に扮したバスターズとランダ大佐のやり取りには笑っちゃいました。
基本的にキルナチ!!ムービーなので、いちおう大ボスとしてヒトラーなんかも登場するわけですが、史実は全く無視。だからこその爽快感。
分かりやすい悪役としてナチスを描いているだけなのね。
大きな顔の復讐者は高らかに笑い、ヒトラーは蜂の巣でナチスの高官もろとも焼き尽くす・・・という、これまで誰も成し得なかった怒濤のクライマックスに、思わず一緒に高笑いしたくなりました。
映画を愛するタランティーノならではのシチュエーションで、そのものズバリなある物を使っての悪者退治であるところがまた素敵。
で、さらなるオチにはちょっと笑っちゃう(笑)
さんざん人を貶めてきたのに、軍服を脱げばあっさり普通の人なんて許されんのじゃ!
タチの悪いイジメッ子レベルの屈辱的なお仕置きは、バットでブチ殺すよりもずっと彼には相応しいのでした。ちゃんちゃん♪
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コメント
こんばんはー!
「イングロ」、タランティーノの作品の中では一番好きかも!
タラ監督の作品って、会話部分に乗れないことも多くて。
その点「イングロ」は、ランダ大佐が一言喋るごとに緊張が高まってくのがたまらない!
ベラベラ喋り倒した後で、お菓子でタバコを消すランダ大佐が妙に怖いですねぇ・・・。
「キャットピープル」のシーンはゾクゾクしました!
あと、美しい自然の中を血まみれで爆走するショシャナのシーンとか・・・
ショシャナ関係のシーンは、美しくて気品さえ感じる演出でした。
投稿: kurosui | 2009年12月 1日 (火) 19時40分
kurosui様
こんばんは♪
もう一回観たいくらい。
イングロ、おもしろかったですね
ランダ大佐は物腰はあくまで柔らかなだけに余計こわかったです。
悪者だけど今回かなりお気に入りのキャラ
そうそう!あのお菓子でタバコを消すシーンとかめちゃくちゃ緊張感ありました。
「キャットピープル」のシーンではkurosuiさんを思い出しましたよん
ショシャナ役の女優さんはたぶん今回初めてだと思うのですが美しかったです。
映写室での最後のカットも印象的でした。
投稿: kenko | 2009年12月 2日 (水) 18時07分
こんばんわ(^◇^)
これ物凄く観たい映画です、記事をみさせていただいて更に観たくなりましたねえ(^o^)丿
投稿: 猿吉君 | 2009年12月 3日 (木) 18時40分
猿吉君様
こんばんは!ちょっとおひさしぶりかな?
観て観て〜〜!猿吉君さんの感想も聞きたいです♪
けっこうスカッとする映画ですよん。
投稿: kenko | 2009年12月 4日 (金) 19時00分
kenkoさんこんばんは☆
コメTBありがとう〜♪
わー、kenkoさんも去年はタラ映画が2位?!
わたしもですよー!
偶然!!
今年はこのイングロ入れちゃう♪
やっぱりキャラが最高!音楽の良さもね♪
イーライロス、けっこういい役もらいましたよねー。
これはタラも次の映画で出してあげなきゃ。^^
>さんざん人を貶めてきたのに、軍服を脱げばあっさり普通の人だなんて許されんのじゃ!
そうそう、この精神もサイコーです♪
投稿: mig | 2009年12月 5日 (土) 00時30分
こんばんは~♪
kenkoさんは堪能されたようですね
この映画って大好き!って方とイマイチ!って方にハッキリ分かれているみたい、、、そんなところもタランティーノ監督ならではかもね♪
私は残念ながらイマイチ!の方だったのですが
、、、どうもハマれなくて(汗)時々眠気が、、、
ランダ大佐は良かったです
彼が出るシーンはドキドキしましたよ~
ブラピよりも目立っていましたね!
投稿: 由香 | 2009年12月 6日 (日) 18時21分
mig様
お返事ありがとうございます♪
確か1位にしたはず!と思って過去記事観たら
1位は「パンズラビリンス」
2位だったのでした
migさんも2位だったのね♪
今年もそろそろベストの季節ですね!みなさんの発表が楽しみ
キャラの良さなんてちょっとした役にいたるまで抜かりなかったですよね〜
イーライロスにバットで殺されるおじさんとか、けっこう印象深いです(笑)
タラちゃん、次の映画でいい役もらえるかな?
ナチス許すまじ!という精神が徹底してるところが良かったです!
投稿: kenko | 2009年12月 6日 (日) 19時06分
由香様
こんばんは♪
はい!思いっきりタラちゃん流エンタテイメントを堪能しました
単純におもしろかった〜!って感じ。
しかし意外と評価は分かれてるみたいですね。
まあタランティーノだし、そんなもんか(笑)
ブラピが主役と言いつつ、ランダ大佐目立ちまくってましたよね〜
お笑い担当ブラピ、ドキドキ担当ランダって感じ?
ヴァルツさんの今後の映画出演も楽しみです!
投稿: kenko | 2009年12月 6日 (日) 19時20分
kenkoさん、こんにちは。
さすがのタランティーノでござりましたね。
すんごく面白かったです~。
オタクにもいろんなタイプがいますけど、タラは生身の俳優・人間の魅力を見せてくれる映画ヲタなのがいいですよね~。
その極みたるヴァルツさーん。
投稿: かえる | 2009年12月 7日 (月) 14時59分
kenkoさん
映画を持って史実を変えちゃう!ってここまで有名な歴史上の人物が
題材だとコントくらいしかやらなくなっちゃいますが(笑)
そこを敢えて超大作でやっちゃうタラちゃんが素敵すぎます。
そういえば自分「グラインドハウス」1位にしてたんですけど、今回も
かなり高得点で今年どうしようかなーと思ってます。
そうそう、「曲がれスプーン」プレビュー公演見てきましたよ。
いい意味で期待したものと同じで楽しかったです。
投稿: kazupon | 2009年12月 7日 (月) 15時44分
かえる様
ござりましたねぇ〜
映画観ててなんとなくマンネリ〜な気分になることがたまにあるのですが、
そんな時いつもガツンとパンチの効いたのを届けてくれる。
タランティーノ映画にはそんなイメージがあります。
映画オタクなタラちゃんは人間オタクでもあるのかも?
どのキャラクターも魅力的で、キャスティングは最高♪
イチオシはやっぱりヴァルツさん
投稿: kenko | 2009年12月 7日 (月) 20時34分
kazupon様
ヒトラーがあんなことになっちゃう映画なんて今までなかったですもんね(笑)
ヒトラーそのものはコントみたいな印象のキャラクターでしたが、
映画はあくまでタランティーノの超大作!さすがですね
kazuponさんはグラインドハウスが1位でしたか。
今月観る予定もあと3、4本くらいだし、
たぶん手持ちの映画でほぼランキング決定だけど
意外と良かった作品が多くていつになく悩みそうです。
イングロ入れる人も多いでしょうね。
kazuponさん、プレビュー公演に行かれたんですね!
いいな〜!広島公演は2月です〜
いい意味で期待したものと同じってどんなだろう?(笑)楽しみです♪
投稿: kenko | 2009年12月 7日 (月) 20時56分
kenkoさん、おはようございます
実はわたしタランティーノ初鑑賞でした。でもなかなか面白かったです
『グラインドハウス』って好きな人多いですよね~ でもこないだ「大コケした映画ベスト10」の中に入ってましたよ(笑) それにくらべてこちらは過去のタランティーノ作品の中では一番勢いがいいみたいで
まあ『グラインドハウス』もいつかは見てみたいものです
>そのものズバリなある物を使って
これ、映画ファンには常識ですよね(笑) 『ニューシネマ・パラダイス』を思い出しましたよ~
脱線して申し訳ありませんが、こないだ某SNSで『ニューシネマ』の話題を出したら「オールタイムベストです!」という方が何人もおられて、いまさらながらその人気にびっくりしました
投稿: SGA屋伍一 | 2009年12月 8日 (火) 07時36分
SGA屋伍一様
どもどもー
なんと初タランティーノだったのね、SGAさん。
えー!「グランインドハウス」が大コケした映画ベストテンに!?
そうなんだ・・・てっきり大ヒットしたもんだと思ってた(笑)
今回のはあちらでは「パルプフィクション」よりもお客さんが入ってるんですよね?
「グラインドハウス」いつか2本合わせて観てみてくだせえ。
イキオイでDVDBOX買っちゃったのでお貸しできるといいのにな。
ちなみにタランティーノの映画の中では一番人気なさそうな「ジャッキーブラウン」がなぜか好きで、あとタラちゃん監督じゃないけど脚本の「フロムダスクティルドーン」も好きでっす
そうそう!「ニューシネマ〜」でも燃えてましたもんねぇ〜
ニューシネマは不動の人気ですね。
少し前に地元の映画館で上映してて、予告篇観るだけでボロ泣きだったので観に行きたかったんですがすぐ終わっちゃった。
投稿: kenko | 2009年12月 8日 (火) 20時59分
こんばんは!
キャラがよくて、ランダ大佐を演じたクリストフ・ヴァルツはすばらしかったですねー。この方がでてくると、ワクワクさせられました。
>しかも曲が『キャットピープル』だし!
『キャットピープル』の曲なんだー。
どこかで聴いたような、はて?って思ってたんですよ。
さすがタラちゃんのセンスですね!
投稿: アイマック | 2009年12月10日 (木) 22時39分
アイマック様
こんばんは
個性的なキャラクターばかりでしたよね。
みんな良かったけど、中でも光ってたのはやっぱりヴァルツさん
キャットピープルの曲だったんですよ〜
タラちゃんの選ぶ曲って、マニアック過ぎて何が原典か分からなかったりしますが
キャットピープルは大好きな映画なので嬉しかったです♪
投稿: kenko | 2009年12月11日 (金) 20時27分
こんばんは! わたしもイングロ,ハマリましたよ〜♪ いいわ〜とっても痛快だわ。タラちゃんものでは,キル・ビルもけっこう好きなのよね。
ナチスものだからって構えないで,これは楽しんじゃったもん勝ちですよね。ランダ大佐が古畑さんって,そう言えばお顔も喋りかたもちょっと似てますね!
投稿: なな | 2010年5月17日 (月) 22時02分
なな様
こんにちは
ハマりますよねぇぇ〜〜
ナチスは出てくるけど、難しいこと考えないで楽しめました。
『キルビル』は実はタラちゃん作品の中ではそんなでもなかったりしますが
イングロの前の『グラインドハウス』にはハマりました!
この映画観たとき、ちょうど再放送の古畑任三郎を観てて
ランダ大佐の見事な推理っぷりがカブったのでした
探偵っぽいんですよね、ランダ大佐って。
投稿: kenko | 2010年5月18日 (火) 16時11分