月に囚われた男
監督ダンカン・ジョーンズはデヴィッド・ボウイの息子で、長編映画デビューにして英国アカデミー新人監督賞ほか多くの賞を受賞したんだとか。
ムーンベースでひとりぼっちの男はサム・ロックウェル。
コンピューターの中の人はケヴィン・スペイシー。というだけでそりゃもう惹かれる。
<あらすじ>
近未来。地球のエネルギーは枯渇したが、月に新たなエネルギーが存在することが分かり、ルナ産業は採掘のため一人の男を月に派遣した。
サム・ベル(サム・ロックウェル)とルナ産業の契約は3年。
リアルタイムで地球と交信する機能は故障しており、話し相手はAIを搭載したコンピューター・ガーディ(ケヴィン・スペイシー)のみの孤独な日々だった。
契約終了まで2週間となったある日、サムは作業中に幻覚を見て事故を起こしてしまう。
目覚めると基地内の診療室だった。事故のことは覚えていない。
サムは事故があった採掘ポイントに行き、作業車の中で自分とそっくりの男を見つける。
(月に囚われた男 公式サイト)
以下ネタバレ!これから観る方はご遠慮ください
手塚治虫のマンガで読んだような話。
いかにも未来的な洗練されたビジュアルじゃなく、どこか懐かしさを感じる敢えて無骨なデザインの月面基地や、『2001年宇宙の旅』のハル的存在であるガーディなど、好きな人にはきっとたまらないセンス。
舞台が月ってのがまたありそでない感じで新鮮です。
サム・ロックウェルありきで書かれた脚本だけあって、サム演じるサムはハマリ役。
元のサムの記憶を移植されているとはいえ彼らは3年が寿命のクローンであり、妻と娘を愛する大人の男であると同時に、この世に生まれたばかりであるがゆえの赤ん坊のような無垢な心も持っている。
最初のサムより後のサムの方が怒りっぽくて乱暴なのは、個体差もあるけど単に生まれたてだからではと思います。
二人のケンカはまるで子供のケンカだし。
いいかげんなオッサンぽくも少年ぽくもあるキャラクターはサム・ロックウェルにぴったりで、一人芝居ならぬ二人芝居は見応え満点。
クローンに出会ってしまう、もしかしたら自分もクローンかも・・・それは自分という存在を根底から覆す恐ろしい真実だけど、過剰に苦悩したりはせず、やがて同じ記憶を持っているからこその不思議な友情が芽生える。
おもしろかったしこういうの好きなんだけど、ちょっと話の展開が予想通りすぎる気もしました。
ガーディが本当にAIらしい良心を持った相棒だったこととか、サムの計画が本当に成功しちゃったりとか、意外といえば意外でしたけども。もっとイジワルな結末を想像してただけに。
そういえば最初のサムが見た幻覚は誰だったのか。
あとから思えば成長した娘にも見えたけど、単なるバグってことで内容はどうでもいいんでしょうか。
『銀河ヒッチハイクガイド』や『サンシャイン2057』など、イギリス産のSF映画にはシュールで味わい深いものが多いです。
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コメント
kenkoさん、おはようございます。お返事が遅くなってしまってすいません
時々こういうことありますけど、サムがサムを演じるってけっこうややこしいですよね・・・ しかもサムAとサムBの両方を演じなくてはいけない(当たり前ですが)。ロックウェル氏もきっと撮影中は「あれ? 自分どのサムだっけ・・・」と混乱されたに違いありません
手塚治虫の漫画か・・・ そういえば『火の鳥』の「生命編」だったかな。大量に作られたクローン人間がテレビショーのためにバンバン殺されていくというひどい話でしたね。この映画もそういう悲劇的な最後を予想していたのですが・・・ 意外と良かったです(笑)
自分の分身を月面から見送る彼の姿は、あまりにも悲しかったけれど
投稿: SGA屋伍一 | 2010年8月 2日 (月) 09時04分
SGA屋伍一様
おはようございますー。お返事はお気になさらずに( ^ω^ )
あて書きだけに「サム」だったんでしょうかね。
ロックウェルのリアル混乱が目的だったとか?(笑)
メインキャストはたったの二人、しかも片方は声だけですが
この二人だからこそよかったのかなーと思います。
そうそう『火の鳥』生命篇とか連想しますよねぇ。
他にも手塚治虫のマンガで似た話がありそうな気がするのですが・・・
おなじく悲劇的なラストを予想していたのですが、ガーディはほんとにいいやつだったし
サムの計画もちゃんと成功するし、意外といえば意外なラストでした。
投稿: kenko | 2010年8月 2日 (月) 11時27分