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息もできない

Breathless

各国映画祭、映画賞で25以上もの賞に輝いたという韓国インディペンデント発の話題作。
ようやっと地元でも公開されまして、『マーターズ』以来の横川シネマに駆けつけました。
横シネは少し前に『隣の家の少女』もやってて、超観たかったんだけど断念してしまった・・・
私の弱虫!!

<あらすじ>

借金の取り立てをしているサンフン(ヤン・イクチュン)は、誰彼かまわず暴力をふるう男。
母と妹を死なせた父(パク・チョンスン)を許すことができず、出所して自宅にいる父をいつも殴っては責めていた。
ある日、サンフンが道端で吐いたツバが女子高生ヨニ(キム・コッピ)の制服のネクタイについてしまう。
強面のサンフンを恐れもせずつっかかるヨニをサンフンは殴るが、それでもたじろかないヨニと奇妙な交流が始まる。

息もできない 公式サイト

またしても恐るべき韓国映画。問答無用の傑作でございます。
製作・監督・脚本・編集・主演ヤン・イクチュン。てのがまたオドロキ。

イチ観客としては、主人公サンフンを演じるヤン・イクチュンというよりも、サンフンという、暴力を誰よりも憎んでいるのに暴力をふるうことしかできない一人の男が、本当にそこに存在しているとしか思えない。
なのでサンフンが監督脚本その他までこなしているという事実に、観た直後かるく混乱してしまいました。のめり込みすぎだっつの。
とにかくそれくらい主人公サンフン、そして映画そのものに魂が宿っているということです。
なんでもイクチュンさん自身、家族との間に問題があって、それを吐き出すことで自らを救済するべく、やむにやまれぬ思いで書き上げた脚本なんだそうで。
物語として脚色している部分はあっても、これはイクチュンさん自身の極めて個人的な作品。
こういう映画は、映画だからとサラリと受け流せないし、かと言ってガッツリ受け止める器も持ち合わせてはおらず・・・いつまでも悶々と考え込んでしまいます。
悪態をつく、男を殴る、女も殴る。最低のチンピラなのに憎めない。
荒々しい感情をぶちまけながらも必死で生きる男サンフンの残像が、心から離れません。

danger以下ネタバレ!danger

観ているうち、女子高生ヨニも、その弟ヨンジェも、サンフンの甥ヒョンインも、それからサンフンのお父さん、ヨニのお父さんも、みんなサンフンの分身に思えてくる。
どん底の暮らしの中で、暴力に振り回されている人々。
サンフンが「なんでだ!」と叫びながらある人物をボコボコに殴るシーンがありますが、ほんとうにもう、なんで?どうして?と叫びたくなります。

家族というしがらみはサンフンを苦しめるけれど、ギリギリのところにいるサンフンを支えたのもまたある意味家族だったり、人とのつながりだったりする。
仏頂面のサンフンが、ヨニの前でだけ見せた笑顔と涙は、まるで奇跡。
そしてようやく人生をやり直す選択をしようとした矢先の悲劇。

親しい人たちは悲しみを乗り越え、それこそサンフンが夢見たような温かい絆で結ばれた。
と、悲劇のあとの救いを描きつつもそこでは終わらず、最後の最後に、暴力の連鎖が終わっていないことを示すシーンを持ってくるところがまた憎いです。
暴力をふるう弟の姿に、かつてのサンフンを見るヨニ。
彼らのこれからを思わずにはいられないラストでした。

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映画」カテゴリの記事

コメント

「隣の家の少女」を観られないのは弱虫ではありません。
大ダメージからの正当防衛です。原作も映像もあまりにも
きつすぎます。読んだ後、傍に置いておけなかった本は
これとオンリーチャイルドだけ。ケッチャム恐るべし!
母なる証明の時も感じましたけど、韓国の俳優さんって
ホントいい顔をしてますね。美男美女である以上に
「生きてる」っていう味のある顔です。
バラエティで新宿のホストクラブの売れっ子ホスト達が
出てきたのを観たら、全員ゲームのCGキャラみたいな
ツルンとした人間離れした顔で気味悪かったです。
ああいう顔が女の子にもてるのかしら?

投稿: 奈良の亀母 | 2010年6月13日 (日) 20時55分

奈良の亀母様

弱虫じゃない・・・そうですよね。
てゆーか亀母さん、映像も観たのー!?
上映最終日のギリギリまで悩んだけど・・・
「マーターズ」は好奇心が勝って観に行き結果オーライでしたが
「隣の家の少女」は・・・原作を知ってるだけに、何を好きこのんで金曜の夜に
わざわざあの地下室にもう一度行く必要があるのかと・・・
置いておけなかった本はケッチャムだけですか。おそるべし!

そうそう、ポンジュノ映画の俳優さんもみんないい顔してるけど
こちらも味のある顔が揃ってました。
CGキャラみたいなホスト顔はキモい〜
サンフンの顔の方がずっと好き。

投稿: kenko | 2010年6月14日 (月) 11時36分

こんにちは★

これ、監督の経験から作ったっていうのが凄いですよね。
主演のひとが監督ってびっくり。
殴る蹴るシーンは痛々しくて生々しくて。観ててちょっと辛かった〜

投稿: mig | 2010年6月16日 (水) 08時49分

mig様

コメントありがとうございますshine

監督脚本主演が同じ人って、観る前にどこかで聞いたと思うんだけど
観てるあいだは忘れてて(そればっかsweat02)後でびっくり。
暴力シーンは痛かったし辛かった。。。
でもヨニとのシーンはキラキラしてました。

投稿: kenko | 2010年6月16日 (水) 19時58分

こんばんは。CGホスト顔のイケメン伍一です
横川シネマというとこは、なかなかマニアックな映画をかけてくれるとこなのね。いいなあ
ちなみにわたしが見にいった新宿武蔵野館という劇場では同じ時期に『トライガン』の劇場版をやってました。わけがわかりません。そして同じ日にその二本をはしごしたのはわたしくらいでしょう

家庭というのは本当は癒しの場であるはずなのに、何かが少し変わっただけで息詰まるような場所になってしまう。やるせないですね

ヨニちゃんはサンフンよりもずっと年下なのに、なぜかサンフンのお母さんのようでありました。きっとええオカンになると思います

どうでもいいことですが、二人が泣いていた漢江のシーン。「漢江といえばグエムル・・・」とついいらんことを思い出してしまいました・・・

投稿: SGA屋伍一 | 2010年6月16日 (水) 20時14分

SGA屋伍一様

あら?行き違いかしら。今そちらへおじゃましたところです♪
CGホスト顔はいやーんsad

横川シネマはミニシアター系の映画の中でも特にマイナーなやつをかけてくれるので
ありがたいです。
「息もできない」を観に行ったときギリギリに着いちゃって、
入り口に誰もいなくてお金払わずに入って観て、観賞後に自己申告。
館長さんがたったひとりで切り盛りしているがゆえですが、そんなステキな映画館です。

「トライガン」と「息もできない」二本立てはSGAさんらしい(笑)
ハシゴするときって、どういう組み合わせ、どういう順番にするか、けっこう考える。
「トライガン」は広島では再来週くらいから始まります。おすすめ?

確かにヨニはお母さんっぽいとこありましたね。
逆にサンフンは少年のように見えるときがありました。
漢江のシーンでは私もグエムル思い出した!
だって漢江といえば、グエムルじゃないですか(笑)

投稿: kenko | 2010年6月16日 (水) 21時05分

kenkoさん こんばんは!
クリスマスシーズンでレスが遅れてごめんなさい。
これって,衝撃的でパワフルな傑作ですよね!

>仏頂面のサンフンが、ヨニの前でだけ見せた笑顔と涙は、まるで奇跡。
全編がにどうしようもなく重くって痛いもんだから
そのなかにほんの少し散りばめられた温かさとか人の絆とかが
まるで宝石みたいに光る作品でもありました。
でもおっしゃるように,
ラストはやっぱり暴力の連鎖をほのめかすあたり
やっぱり問題は依然としてそこにあるんだっていう示唆が
とても心憎かったですよね。


投稿: なな | 2010年12月20日 (月) 22時49分

なな様

いえいえ、お気になさらずに〜
忙しい時期ですもんね。ゆっくりのんびりやりましょうxmas

またしても見応えのある韓国映画でした。
しかも初監督作品で主演で脚本で演出で・・・なにもかもひとりでやってるなんて。
ほんと、ほんの少しの温かいシーンが宝石みたいにキラキラしてましたね〜
個人的には漢江での涙より、笑顔のシーンが好き。

で、終わり方がまたうまくて。
あの姉弟はこれからどうなる、どうするんだろう・・・と考えずにはいられません。

投稿: kenko | 2010年12月21日 (火) 22時31分

もう一年経ったし、その間にいっぱい映画を観たけど
相変らず、心のどっかにありますね~。

kenkoさんのレビューで、また観たくなりました。
取り敢えず、パンフレットを引っ張り出して
あの河岸のショットでも眺めることに致します。

投稿: ほし★ママ。 | 2011年6月23日 (木) 18時08分

ほし★ママ。様

ほし★ママ。さんの2010年作品賞ですもんねcatface
毎年たくさん映画を観るけど、時間が経っても心のどこかに残ってる作品は特別ですね。
『息もできない』はそんな1本。

ヤン・イクチュン氏、しばらく次の作品を撮る気はないらしく・・・
残念なような、納得のような。

投稿: kenko | 2011年6月24日 (金) 01時02分

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