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渇き

Thirst

復讐三部作で有名なパク・チャヌク監督のヴァンパイアムービー。
2月くらいからずーっと待ってた作品。
ミニシアター系と思ってたら、ひっそりとシネコンで上映されてるし。

<あらすじ>

神父サンヒョン(ソン・ガンホ)は、病院で重病患者を看取るばかりで救うことができない自分の無力さに絶望し、アフリカにある研究所で行われている死のウイルスの実験台になる。
発病したサンヒョンは一度心臓停止するが、まもなく奇跡的に生き返る。
サンヒョンは救世主扱いされ、人々は救いを求めて彼のもとを訪れるようになった。
あるときサンヒョンはある女性から、癌になった息子のために祈ってほしいと頼まれ、病室に行ってみたところその息子は幼馴染みのガンウ(シン・ハギュン)だった。
ガンウには義妹テジュ(キム・オクビン)がいたが、成長したテジュはガンウの妻になっており、夫と義母にこき使われて暮らしていた。
テジュに惹かれるサンヒョン。やがてサンヒョンの身体は吸血鬼へと変わっていく。

渇き 公式サイト

さすがパクさん。ヘンな映画だ。
神父なガンホが吸血鬼になる過程からしてじゅうぶん異色なのに、物語は人妻相手のラブストーリーへ、殺した夫が化けて出てくるあたりはまるでゴーストホラーだし、チープな特撮映画にしか見えない瞬間もあったりしつつ、落としどころは吸血鬼ものとしては王道といえる、哀しくもロマンティックなデッドエンド。
そのすべてに、ユーモラスかつ猟奇的な味付けがしてあるところがパク・チャヌクっぽいcatface
神父に救いを求めてやってきた女性の息子がたまたま幼馴染みで・・・という序盤の展開がやや強引に感じたりもしましたが、物語が二転三転四転するうち、そんなのどうでもよくなった。
上映時間はけっこう長めなんだけど、サンヒョンとテジュ、二人の行き着く先が読めず飽きることはありませんでした。

吸血鬼にはエロスが不可欠と思うので、その点ガンホってどうなんかと心配だったりもしましたが、減量してすっきりしたガンホさんは立派にエロスを漂わせていました。
ヒロイン役のキム・オクビンもいい。
スレンダーボディを惜しげもなくさらし、欲望をストレートに求める奔放さから目が離せないテジュを熱演。
ときに可憐な少女で、ときに残虐な悪女。くるくる変わる表情が魅力的。
テジュの夫役シン・ハギュン、その母役キム・ヘスクも、後半どんどんスゴイことになっていきます。

リコーダー、手芸バサミ、十徳ナイフなど、残酷描写における小物使いの巧さにも感心。
痛覚を刺激するシーン多し。
夫をただ溺死させたりせず、ついでに釣り針をテジュの耳たぶにひっかけるという工夫を凝らし我々を楽しませてくれます。
でもこれは結果としてガンホの栄養補給に、殺人を事故に見せかけるのに計らずも役立ったわけで無駄に痛いわけじゃない。
ラストある意味ほほえましい痴話ゲンカ的シーンでも、指をいっぽんずつ折り曲げてみたり骨が飛び出しちゃったり、けっこう痛いのてんこもりなのですが、不死身で怪力の吸血鬼カップルならきっとそういう展開になるだろうし、物語の中のリアルをちゃんと突き詰めたと思われる納得の残酷描写なのでした。

虐げられた日常から逃げ出したかった人妻テジュ。
出会ったのは、彼女の想像をはるかに越える非日常の男。
神父と不倫という背徳感を楽しんでいたつもりがまさか吸血鬼なんて・・・ドン引きして当然です(笑)
けれどその吸血鬼は優しいし、力持ちだし、血液は昏睡状態の患者から失敬したものをボトルで飲んでたりして、案外キュートなのだった。
テジュにとっては白馬の王子様みたいなもの。特別な宝物を見つけた気分。
二人の関係はエロティックだけどかわいらしくもあって、ちょっと羨ましくさえ思えた。
でも幸せはほんの一瞬で、殺人という一線を越えてしまった二人はあっというまに堕ちていく。
息子を失った母はショックのあまり全身不随に。すべての修羅場の目撃者となる。

あまりにいろんなことがありすぎて忘れていたけれど、二人は確かに恋し合っていたのだと思い出させてくれたラストシーンで思いがけず落涙。
神父とか吸血鬼とか関係なく、始まりは裸足の女に男が履かせた優しさだったんだよね。
やっぱりこれは、残酷で激しくて哀しい、でもどこかキュートなラブストーリーだったのだと思いました。

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コメント

ども。こちらにも

>序盤の展開がやや強引に感じたりもしましたが

それを言ってしまったらパク・チャヌク作品は始まりませんよ! 大体自分から志願したとはいえ、ほぼ確実に死ぬようなあんな実験してもいいのかとか。『オールドボーイ』の時も「あんな人を閉じ込めておくなんていう商売、成立するんか?」と思ったっけ。でもまあ「パクさんならいいか」と流せてしまうあたりが、この方の人徳のような気がします

馬鹿息子とそのお母さんの関係は、『母なる証明』の親子を思い出したりもしました。向こうは過保護のお母さんが多いのかなあ。そうするとかえって息子がダメになると、どうしてわかんないんだろー

正直言うとちょっとひいちゃったところもある映画でしたが、ラストの二人はあまりにも切なくて泣きそうになりましたcrying

投稿: SGA屋伍一 | 2010年7月10日 (土) 00時31分

SGA屋伍一様

こちらからお邪魔するはずが、毎度グズですみません。

>それを言ってしまったらパク・チャヌク作品は始まりませんよ

はは・・・そうかsweat02そうですよね。いらんこと言いました。
『オールドボーイ』だってありえない設定でしたもんね。
それも含めてパク・チャヌクか。

息子と母の関係、『母なる証明』にも通じるものがありましたね。
あちらって家族のつながりがすごく強くて、お父さんお母さんの存在が絶対的・・・という
ほんの数作韓国映画を観ただけの印象を韓国ドラマウォッチャーの母に話してみたら
深く頷いておりました。どっちもどっちな母娘。
母いわく、そういうところが昔の日本っぽくていいんだとか。

私もひいちゃうほどではないけど、ちょっと見てられないシーンはありました。
テジュがハサミを寝ている夫の口に何度も振り下ろすシーンとか・・・
最後はがっつり泣いちゃった。切ないラストでしたよねweep

投稿: kenko | 2010年7月10日 (土) 16時53分

こちらにも~

チャヌク監督ワールドはどんどん暴走して言ってる気もしますが
やはりそれはそれで他人には真似のできない凄さを感じますね~
映像といいストーリーといい決して凡人の感性では共感しにくいのですが
それでもこんな作品好きですね~
ドロドロしてて荒唐無稽でグロテスクな展開でも
最期はちゃんと切なく幕を下ろすところが
この監督さんの持ち味かもしれませんね。

投稿: なな | 2010年9月18日 (土) 23時34分

なな様

他の人には真似できない作品をつくれるって凄いことですね。
チャヌクさんにはどんどん暴走していってほしい。
復讐三部作では、『復讐者に憐れみを』がいちばん好きですが
『渇き』はその次くらいかも。(『オールドボーイ』は実はちょっと苦手)
切ない幕の下ろし方はとくにツボです。

そういえば最近、韓国映画はちょっとお休み中。
そろそろガツンとくるの、ないですかねぇ。

投稿: kenko | 2010年9月20日 (月) 19時04分

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