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9<ナイン>9番目の奇妙な人形

9

『第9地区』『NINE』に続き、今年3番目のナイン。
05年のアカデミー短編アニメーション部門にノミネートされた11分の作品に、ティム・バートンはじめ製作陣が惚れ込み、80分の長編劇映画にスケールアップしたというCGアニメーション。

<あらすじ>

古びた研究室で目覚めた一体の人形。
ボディは麻布でできており、背中には数字の<9>が書かれていた。
自分が何者かも分からず外へ出てみると、あたりは一面の廃墟。
そこでナイン(イライジャ・ウッド)は自分と似た姿で、背中に<2>と書かれた人形に出会う。
ツー(マーティン・ランドー)はナインの言語機能を修復し、自分たちは仲間だと話す。
そのとき凶暴なマシン<ビースト>が襲ってきた。

9<ナイン>9番目の奇妙な人形 公式サイト

これはいい!すばらしいです。
麻布にパチパチおめめのゴーグル、お腹にチャックがついたちっちゃな人形、まずその造型がとっても魅力的。
彼らがガラクタだらけの終末世界を動き回る、それを眺めているだけでも楽しすぎる良質のアニメーション。

ティム・バートンに「これまでの人生で最高の10分間だった」とまで言わせた、もとの短編がいかなるものか気になって観てみました。

http://www.youtube.com/watch?v=5IQcMeNh7Hc

長編バージョンと大差ないクオリティ。この段階でこれほどまでの完成度だったのね。
物語も大きくは変わらないけれど、セリフがないぶん一層シュールで物悲しい。
CGアニメでありながら、どこかヨーロッパのパペットアニメーションを連想させる温かみのある世界。
なるほど、これにハマっちゃったのね、バートンさん。

目覚めたばかりのナインは、死を恐れる様子から人間的な心が宿っていることが分かる。
出会う仲間たちもみな、布と一部メタルでできた同じ仕様の人形なのだけど、その瞳は表情豊かで、それぞれ個性がくっきり分かれているのがおもしろい。
人間のさまざまな一面を象徴するかのような9体の人形。
小さな人形目線の世界はアドベンチャーそのもので、オドロキに満ちている。
吹けばどっかいっちゃいそうなかよわい人形だけに、あまりに大きく凶暴なビーストとのバトルは迫力満点。

人形はかわいらしいが、ぞっとするような暗さを感じる瞬間もあり、それもまたこの作品の魅力。
返り討ちにあったマシンが次に開発したのは、人形の抜け殻を使ったおぞましいスネーク型ビースト。
敵の姿を模倣して油断させ襲う、その悪魔的発想には人間の暗黒面が宿っているような気がする。
人形には人間の良心が、一方マシンには純粋な悪意が。
人形を執拗に追い、捕獲し、その魂を取り込むマシン。
心を持たないマシンは、心を手に入れて人間に近づきたいのかも。
おそろしいマシンだけど、どこか哀しい。

取り戻した仲間の魂を新たな容れ物に入れて復活、めでたしめでたし?と思いきや・・・
死を受け入れつつのスピリチュアルな終わり方は、ファンタジックだけど現実を見据えているような気もして、好感を持ちました。
彼らの魂は天へ昇り、この星の命とも言える水、雨に宿って地面に落ち、世界を再び蘇らせるのだ。
長い時間をかけて。
何度も観たくなる普遍的な物語。

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コメント

すっかり暑くなりましたね・・・ 広島の方はいかがでしょう
kenkoさん、この映画だいぶ気に入られたんですね。たしかにkenkoさんの好きそうな世界だ。こういうビジュアル、日本の漫画家・デザイナーで似た人がいたような・・・とちょっと思いめぐらしたのですが、思い出せませんでした。気のせいだったのかも。kenkoさん思い当たる人、いませんか?

ヘビ型のモンスターで思い出しましたが、一番気の毒だったのは「2」さんでした。登場するなりあんな目にあい、そのあとそんな目やこんな目にも・・・ 心からお疲れ様と言いたいです。でも最後はとりあえずめでたしめでたしと思っていいのかなあ


投稿: SGA屋伍一 | 2010年7月20日 (火) 07時26分

SGA屋伍一様

広島も暑いですよー
暑いの苦手。出かける気がしないsweat02

はい、この映画とっても気に入ってます。
日本の作家さんで似たようなビジュアル・・・うーん、すいません、ぜんぜん思い浮かびません。
どこかで見たような、懐かしいような感じはしますよね。

確かにツーさんはいちばん気の毒でしたね。
ほんのちょっとの出番でも9体の人形それぞれに感情移入させてしまうくらい
キャラクター作りが巧かったなと思います。
最後、めでたしめでたしとは言い難いような、
でも僅かでも確かな希望の持てる終わり方もお気に入りです。

投稿: kenko | 2010年7月20日 (火) 21時04分

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特筆すべきはそのビジュアル{/m_0150/} 今年公開された「9」のつくタイトルの最後の1本(といっても三本関連性なし) 去年の9月NYでやってたけど時間合わず観れなかったの。 やっと日本公開{/m_0158/} 何となく、めちゃ期待してた1本。 試写で観て来ました〜。 同行したのは人形のお話ってことで、人形作家の三浦悦子ちゃん。 [ティム・バートンが贈る]なんてうたい文句だと監督してると勘違いする人も多そうだけど、 バートンはプロデュースのみ。 人類滅亡後の世界を舞台に、番号を... [続きを読む]

受信: 2010年7月12日 (月) 01時57分

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あ、また世界滅亡後の話だw ティム・バートン&ティムール・ベクマンベトフの二大オ [続きを読む]

受信: 2010年7月20日 (火) 07時27分

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