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ケンタとジュンとカヨちゃんの国

Kentajunkayochan

安藤サクラさんは気になる女優さんのひとりなので、この映画も気になっていたのだけど、どーーんと重たい予感もして観るのを躊躇しておりました。
が、上映最終日に、ようやく決心して観てきました。
やっぱりどーーんだったけど、観てよかった。いい映画です。

<あらすじ>

施設で兄弟のように育ったケンタ(松田翔太)とジュン(高良健吾)。
解体現場でひたすら壁を壊す“はつり”という仕事をしていたが、賃金は安く環境は劣悪。
ケンタは職場の先輩である裕也(新井浩文)に理不尽なイジメを受け、賠償金と称して毎月金を払わされていた。
ある晩、二人はある計画を実行する。
事務所をめちゃくちゃに荒らし、裕也の車をハンマーで壊し、会社の軽トラを盗んで逃げるのだ。
二人はケンタの兄がいる網走を目指す。
ジュンがナンパした女の子、カヨちゃん(安藤サクラ)もついてきた。

ケンタとジュンとカヨちゃんの国 公式サイト

あえてぼそぼそと聞き取りづらいモノローグが印象的。
それはもう本当に心の声をそのまま聞いているかのようなトーンで、聞いてはいけないものを聞いているような気さえしてドキドキする。
声に導かれて、彼らの思いにシンクロしていく感覚。
だからって「分かる」と言ってしまったら嘘になるけど。

なんていうか、これが現実の一部なのだとしたらあまりに惨めで救いがない。
でも映画的には美しくも感じてしまいます。

「なんでついてきたの?俺とお前は違うのに」
旅の途中、ケンタは何度もそう言ってジュンを突き放します。
ジュンがついてきた理由は分かる。
ケンタのことが好きだから。ジュンにとってケンタはただひとりの家族だからだ。
ケンタだってジュンを本当の弟のように思っているはず。
それなのにどうして、冷たい言葉でジュンを傷つけるの?
ケンタは兄がそうしたようにいずれ、すべてをぶっ壊す自分を知っていた。
ケンタは自分は選べない人間だけど、ジュンは選べる人間、もしくはそうであってほしいと願っていたんじゃないかな。
ジュンにはカヨちゃんがいるし、カヨちゃんに愛されているし、愛することもできる。
兄は虚ろな目をして、ぶっ壊しても何もないと言う。
たった一人の肉親にわずかな希望を否定され、ケンタは絶望するけれど、本当は心のどこかで無意識に気付いていたのではないかと思う。
ぶっ壊したあげくただ終わってしまう未来に、ジュンを巻き込みたくなかったのでは。
なんて、ぜんぶ都合のいい想像。

飼い主を喰ったという闘犬が出てくる。
ケンタの傷口に触れ、手に付いた血をペロリとなめるジュンを見て、その犬を思い出しました。
ジュンはただケンタといっしょにいたかっただけ。
そして彼らは行く。彼らだけの国へ。

あまりにも美しいカヨちゃんの顔が大写しになったとき、その国はカヨちゃんの中だけにあるのかもしれないと思いました。
というか、あってほしい。

キャストはみんないいんだけど、やっぱり安藤サクラさん。すごいです。
スクリーンに映る彼女の一挙手一投足から目が離せません。
まるで犬コロみたいな純粋さ。あんまりかわいくて笑ってしまう。
新井浩文さんもいいなぁ。こういう最低なチンピラの役がハマりますよねぇ・・・
『ゲルマニウムの夜』も観てみたい。

エンドロールの最後の瞬間を過ぎても、席を立つのに躊躇するED曲もまたすばらしい。
恥ずかしながらぜんぜん知らなかったのだけど、40年前の曲のカバーなんですね。

 私たちの望むものは、あなたと生きることではなく
 私たちの望むものは、あなたを殺すことなのだ

なんという歌詞。脳髄にしみこむ歌声とメロディ。
映画の内容にシンクロしすぎです。

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コメント

こんにちわ 通りすがりのものです。

19日にケンタ・・ を観ました
切ないやら重苦しいやらで
考えがまとまらずもやもやしてました

レビューを読ませていただき落ち着きました
もう一度スクリーンで観たいとおもいました

面会のシーンは鳥肌が立ちました 
ほんと いい映画でしたね おじゃましました。

投稿: | 2010年7月21日 (水) 15時52分

通りすがり様

コメントありがとうございます。
切ないし、重苦しいし、もやもやしますよね。
でも観てよかった、いい映画でした。
役者さんがみなさん素晴らしくて。

面会のシーンもねぇ・・・
カズ役の宮崎将さん、凄まじかったです。

こんなひとりごとのようなレビューでも
読んで落ち着いていただけて嬉しいです。

投稿: kenko | 2010年7月22日 (木) 01時05分

お久しぶりです。
ワタシも昨日この映画観てきました。

観終わったあと、言葉が出なくて、拙い感想を書こうかと思ったけど、まだ言葉にならなくて。

映画観たとき、他の人に聞かれるのは「面白かった?」て聞かれることがほとんどで、でも、単純にそう返せる映画もあれば、そうでないときもあれば。

この映画は、なんて答えたらいいのか分からなく。面白い、といえば嘘だし、暗い、というもの嘘だし。簡単な単語では当てはまらない映画。

でも、ワタシはこういう映画が好きなんです、たぶん。観終わったあとに、考えちゃう映画が。

投稿: とも | 2010年7月28日 (水) 18時22分

とも様

こんにちは!返信がおくれましたm(_ _)m

ともさんもご覧になりましたか。
言葉が出ないですよねぇ・・・
単純におもしろいと言える映画は感想も書きやすいけど
そうでない映画はなかなか言葉が定まらず・・・結果ポエムな感想にcoldsweats01
でもそういう映画の方が、時間が経ってからも心に残っていることが多いですね。
前者のような映画も大好きなんですけどね。

『ケンタ〜』は誰にでも薦められる映画ではないけど、観に行ってよかったと思いました。

投稿: kenko | 2010年7月30日 (金) 10時30分

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