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ブラック・スワン

Black_swan_2

『レスラー』のダーレン・アロノフスキー監督。
予告篇から想像するに、バレエの世界をドキュメンタリー風に描きつつ、ミステリータッチな展開?背中から羽根はえちゃってるし・・・ぐらいに思っていた。
『レスラー』でへぇープロレスの舞台裏ってこんな感じなんだ、というシンプルなおもしろさがあったように、序盤はへぇートゥーシューズって足に馴染むようそんな風に改造して履くんだ、などと呑気にかまえて観ていた。のですが、とんでもなかった。
立派なホラーじゃないか!ショックシーン多数・・・ひさびさに映画観ながらびくうっ!!ってなったよ。
もーこわすぎ。そしておもしろすぎ!
『レスラー』は09年ベストに入れた作品であるし、けっこう期待してたけど軽く越えてきました。
バレエといえば、まっさきに山岸凉子先生のバレエマンガを連想してしまう私ですが、近からず遠からず少女マンガ的に、おぞましくも美しいものがとぐろを巻いている作品でした。

ブラック・スワン 公式サイト

母(バーバラ・ハーシー)もかつてはバレリーナだった。
しかしニナ(ナタリー・ポートマン)を身籠って、バレリーナとしての人生をあきらめた。らしい。
だから愛する我が娘よ、あなたはママのようにならないで、男にだけは気をつけて。
そしてママが「あなたのために」あきらめた夢をきっと叶えて。
真面目な娘はママの期待に応えるため、一心不乱に踊り続ける。
自分は絶対にプリマにならなきゃいけないという強迫観念は、いつしかママの願い以上に彼女の中で膨らみ精神を苛む。

セックス=妊娠=プリマになれない、無意識にそう刷り込まれてる、おそらく。
ママの監視下にあって、若者らしくときにはハメを外す、なんてことができるはずない。
だからこそ、別に女の子が好きというわけでもなさそうなのに、彼女の押し込められたエロスはレズビアン的に歪んでしまったのではと思った。
ニナにないものを持ってる、ニナにはけしてできないことをさらりとやってのけてしまう奔放なリリー(ミラ・クニス)は、なり得なかったもうひとりの自分。
嫉妬と羨望を抱きながら、自分を脅かす存在として、病んだニナはリリーに怯える。

振付師ルロワ(ヴァンサン・カッセル)がニナに対し、とんでもないセクハラ行為を次々とブチかますので、最初はなんだこいつ最低すぎる、と苦々しく見てたけど、確かに彼は芸術家としてはある意味一流ゆえに残酷で、白鳥としてはカンペキ、しかし黒鳥としてはあまりに足りないニナの中の歪んだなにかを直感的に見抜いていたのかもと思った。
しかしその「なにか」はルロワの思惑以上に根が深く、ニナをいっそう追い詰めることになる。

ママ、リリー、ルロワ、そして芸術を極めることにあまりにもストイックなバレエの世界、ニナを追い詰めた原因はそこかしこにあって、しかし誰もニナを壊そうなんて思ってなくて、悲劇に駆り立てたのは結局、ニナ自身だった。
悲劇は美しい。ニナがついに、黒く艶やかに変貌を遂げる刹那、鳥肌が立ちました。

1年間、バレリーナになりきるためのガチのトレーニングに取り組んだというナタリー・ポートマンはまさしく迫真の演技!
ウィノナ・ライダーにはびっくり・・・役とはいえ「おばあちゃん」なんて言われて、しばらく誰だか分かんなかったし。
あんなにかわいかった彼女も、こういう役を演じるようになったんですねぇ。。。

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映画」カテゴリの記事

コメント

記事興味深く読ませていただきました!振り付け師の分析が素晴らしい!
う~ん芸術の世界にはありがちな話ですよね。エロやセクハラと芸術って確かに紙一重なところあります(サブカルだと萌え美少女イラストとかw)。
そういう連中に対して大学でパージした黒歴史のある私にとってはこの映画は苦々しくて見られそうにもないかなあ・・・
はいはい芸術って狂気ですよねわかりました~って感じでw

投稿: ゴーダイ | 2011年5月21日 (土) 17時18分

ご無沙汰しております!


相変わらず沢山映画を見ておられるのですね!(´・ω・`)ウラヤマシイ(笑)


弐瓶先生の新刊「シドニアの騎士 5巻」が5月23日発売ですよ~♪
チェックですね!

投稿: levia | 2011年5月22日 (日) 00時34分

痛々しいまでのナタリーの肉体改造の凄さと
プロ顔負けのバレエの技術に圧倒されましたね。
それにもましてサイコスリラーのようなテーマ・・・
抑圧された自己が苦悩しつつ,最後に解き放たれる様子は
確かに悲劇というよりは私にはハッピーエンドにも見えたりして。
しかし,爪がはがれたり皮がむけたりという
拷問系のイタイシーンが苦手なわたくしは
何度目を閉じたことか・・・
この監督さんの作品って「痛い」シーンが生々しくって
そこだけちょっと苦手です。
ウィノナの落ちぶれようは,彼女の私生活ともリンクして
適役すぎて痛かった・・・。

投稿: なな | 2011年5月22日 (日) 17時07分

大きな期待をかける面と少し羨む面
母親にも2面性が見られましたよね。
狂気と現実の境がわからなくなってしまう場面
観ている側にもあいまい~
そんな演出がすごくうまいと思いました。
トラバを送らせて下さいねconfident

投稿: ほし★ママ | 2011年5月22日 (日) 19時07分

ゴーダイ様

読んでいただきありがとうございます。
いや、分析なんていうほどのもんではないですけど・・・
この映画に出てくる振付師、一般的にはとんでもないセクハラオヤジだと思うんですけど
確かに芸術の世界では、けっこうありがちな人物設定だったかも。
ゴーダイさんが大学時代に出会った人たちと通じるところがあるのかもしれませんが
とにかくおもしろい映画であるのは間違いないので
気が向いたら観てみてほしいなぁ。。。

投稿: kenko | 2011年5月23日 (月) 16時54分

levia様

ご無沙汰です!

5巻!本日発売ですね!むふふcatface
うちのほうでは、店頭に並ぶのはたぶん明日になると思いますが
あとで近所の本屋さんへ行ってみます。

投稿: kenko | 2011年5月23日 (月) 17時00分

なな様

ナタリー・ポートマン、すばらしかったですね。

確かに、ニナにとってはカンペキなハッピーエンドと言えるかも。
ネタバレになりますが・・・ラスト、ニナが鏡の破片を突き立てた人物が
存命であってくれて、少しほっとしました。
だって決定的な罪をおかしてしまっていたのでは、それこそ救いようがないし。

予想外に痛いシーン満載で、さすがの私も何度か目を背けたくなりました。
そういや『レスラー』にも痛いシーンけっこうありましたね。ホチキスを・・・とか。忘れてたわsweat02
ウィノナ・ライダーも痛々しい役で。。。
どうしても若い頃のとびきり美少女のイメージがぬぐえないのだけど
彼女にもいつか、『レスラー』ミッキー・ロークのように復活してほしいです。

投稿: kenko | 2011年5月23日 (月) 17時49分

ほし★ママ様

トラックバックありがとうございますshine

そうそう、母親にも病んだ二面性が。
きっと主役になれる!と期待をかけながら、ほんとうにそうなってしまったら嫉妬してる感じ・・・
母と娘、女同士、バレリーナ同士ゆえの複雑な感情が、多くを語らずとも伝わってきました。
母親役のバーバラ・ハーシーもすごくよかった。
現実と幻覚の区別があいまいな演出で、ドキドキさせられました!

投稿: kenko | 2011年5月23日 (月) 18時05分

kenkoさん、ども

山岸先生の短編にそのものズバリ「黒鳥」というのがあるのはご存知でしょうか。これがまたバレリーナを次々と惑わす振付師が出てきたりして、恐ろしいほど内容がかぶってるんですよね・・・

ニナとお母さんの関係はS・キングの『キャリー』を思い出したりしてました。やっぱどこかおかしいところのあるお母さんでしたが、クライマックスで観客席にいるのを見たら、なんだかかわいそうになってきてしまいましたよ(T T)

投稿: SGA屋伍一 | 2011年6月20日 (月) 12時04分

SGA屋伍一様

どもです(◎´∀`)ノ

山岸先生の作品に『黒鳥』という短編があることは、この映画観たあと他の方の感想などから
知りました。ぜひとも読んでみたいですねぇ。
あと『赤い靴』という映画も観てみたいです。
地元では来月、リバイバル公開されるみたいで。

そう、『キャリー』に似てますね〜。お母さんとニナの関係。
キャリーのお母さんは、もっと分かりやすく怖いけど(笑)
観客席にお母さんがいたのももしや、ニナの幻覚だったりするのかなーと後で思いました。

投稿: kenko | 2011年6月20日 (月) 17時30分

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