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イキウメ「散歩する侵略者」

Sanposurushinryakusya

劇団イキウメ2011年春公演『散歩する侵略者』
6月12日、北九州芸術劇場にて、観てきました。ひさしぶりのちょい遠征。

前回公演『食べもの連鎖』でファンになり、イキウメのサイトで買えるDVDはすべて買って観て(全部すばらしくおもしろい!)、前川知大さん原作のマンガ『リヴィングストン』も買って読んでみたり、イキウメビギナーではありますができる限り追っかけていきたい気持ちでいっぱい。

なんせ前回公演ではイキウメに関する知識が全くなくて、菜食主義の話がまさか吸◯鬼に結びつくだなんてあまりに予想外でびっくりしてしまったのですが、物語に必ず超自然的な何かを絡めてくるイキウメであることを心得ている今は、<侵略者>と聞けばそれはもう、いわゆるインベーダー的なものをまっさきに想像してしまう。
そしてその想像はズバリ。

といっても、でっかい宇宙船が突如上空に現れるわけじゃなく、人間が手当たり次第に捕食されるとかでもなく、人間の身体に入り込んだ彼らは町を徘徊し、出会う人々から<あるもの>を奪ってゆく。

あらすじをチラシから引用します。

<地球侵略会議はファミレスで>

日本海に面した小さな田舎町。
大陸に近いこの町には同盟国の大規模な基地がある。
この国にとって戦略的に重要な土地だ。
加瀬真治は、地元の夏祭が終わると性格が一変していた。
今までの記憶を失くし、町の徘徊を始める真治。
夫を介護しなければならなくなった妻の鳴海は、新しい生活に戸惑う。
町に事件が起きる。
それは老婆が息子一家を刺殺した後、自殺するという凄惨なものだった。
同じ頃、海岸線では町の人々が奇妙な光を見る。
それが隣国のミサイル誤射であることをテレビのニュースは伝える。
凄惨な事件と、軍事的な緊張とが相俟って、町には不穏な空気が流れていた。
そして真治は鳴海に告白する。

<あるもの>とは、<人間特有の概念>
たとえば、家族や血縁という概念、何かを所有するという概念。
奪われた人間は、その瞬間、わけのわからない喪失感で涙を流す。
家族という言葉は知っていても、それがどういうものであるか理解できなくなってしまった鳴海の姉は、家族に対してイラつき、つらくあたるようになる。
町には概念を奪われ、心にぽっかり穴が空いたような人がどんどん増えていく。
この国はとうとう、隣国との戦争を始めた。
その影で静かにゆっくりと、大切な何かが失われていく。

ちょっと連想したのが、小川洋子さんの小説『密やかな結晶』
失ってしまったあとでは、何を失ったのかすら分からなくなってしまう感じとか。

『見えざるモノの生き残り』『プランクトンの踊り場』でもそうだったけど、前川知大さんの描く夫婦の物語にいつも泣かされます。
宇宙人に侵略されるお話なのに、気がつけばそりゃもうポロポロと・・・止まらなかった。
センチメンタルなクライマックスは、そこだけ観るともしかしたら引いちゃうのかもしれない。
でもそこに至るまでの道筋がカンペキだから、呑気な侵略者の慟哭が胸に突き刺さるのです。
喪失感で涙を流すという、彼らが言うところの予想外の生理現象も効いてます。
震災前と後では、たぶんきっと感じ方がぜんぜん違うセリフもちらほらとあって、心を揺さぶりました。

これまで観た限りのイキウメのお芝居では、シンプルで無機質な舞台装置を最大限に使って様々なシーンに見せていく、というのが多くて、それがとてもかっこよかったのだけど、今回の舞台セットは色味はグレーで統一してあるものの、舞台上にはところ狭しとソファやテーブルや診察台やタイヤなど・・・たくさんのモノが置いてある。
それらのモノの配置は最初から最後まで変わらず、舞台上はそのまま病院の診察室になったり、リビングになったりする。
例えばリビングにいる登場人物がメインの芝居をしている隣りで、病院という別空間にいる設定の他の登場人物がなんかやってたりするんですね。
病室で目覚めた立花あきらが、照明や電話などを夢中で解体してたりとかね。(その調子で人体をも解体したんかと納得する)
かと思うと、別空間にいた人物が不意にメインの芝居に加わってきたりとか。
空間と空間がゆるやかに重なっている感じ。言葉で説明するのが難しいですが。
こういうの他のお芝居でも観たことある気はするけど、ここまで全編にわたってというのは初めて。
別空間の人物の動きが気になっちゃって、メインのお芝居に集中できない瞬間もあったけど、それはそれでいいのか。
いくつかの空間の時間を同時に進めることで無駄な説明を省き、物語を効率よく進めているとも言えるし、舞台ならではの演出として、とても興味深くもありました。
そしてこの計算し尽くされた複雑さを、舞台という本番でスマートに、プロフェッショナルに魅せ切る、役者さん、前川知大さん、イキウメはやっぱりかっこいい。

次回秋公演は、現時点でのインフォメーションでは東京、大阪のみ?
しつこいようですがまた、広島にも来てほしいな。

作・演出、前川知大で、仲村トオル、池田成志、小松和重、山内圭哉とキャストも最高すぎる『奇ッ怪 其ノ弐』も非常に観たいです。

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