一命
斎藤勧解由の屋敷や、千々岩求女が暮らすあばら屋など、建物のくすんだ感じが独特。
もしかしてCGでお化粧してたりするかな?
特に勧解由の屋敷は赤と黒のコントラストが見事で、正門は京都西本願寺でロケ、中庭はなんとセットだそうですが、テレビの時代劇などで見る小綺麗な武家屋敷とは全然違うリアル、どちらかといえばアート寄りの佇まい。
オープニングタイトルはそんな素晴らしい美術の屋敷を背景に、渋い縦書きのクレジットが並び、坂本龍一の静謐でドラマチックな音楽が重なる。
それはもう日本が世界に誇るかっこよさ、美しさで、引き込まれます。
役者さんは言わずもがな皆さん本当にすばらしくて、特に主人公津雲半四郎を演じた海老蔵さん。
時代劇初主演だそうですが、歌舞伎役者ゆえか声の発し方とか独特で、映画俳優さんたちの中にあってそれは奇妙な異物感となり、いい意味で得体の知れない不気味さを醸している。
クライマックス、ひとり対大勢の殺陣シーンで、狂気と正気がないまぜになったギラギラした目つき、踊っているかのような、野生の獣ような、画面を支配する神懸かり的な身のこなしはさすがとしか言いようがないし、三池監督の映画で主演が市川海老蔵って最初は意外に思えたけど、観てみて超納得の配役でした。
あとやっぱり瑛太の切腹シーン。
なにかと情報弱者なもので、そんなシーンがあるなんて全然知らなかったんですよ。
そりゃ三池崇史だし過激なシーンのひとつやふたつやみっつはあるだろうとは思ってたけど、もうね、軽く予想を越えてきた。
『127時間』に続き正視できない痛すぎるシーン。しかも長くてゲッソリ
観ててほんとにお腹が痛くなったし、あまりの痛さ、悲惨さに、涙まで出てきてしまいました。
思わぬことで泣かされた。こんなの初めて。
で、こんなにも本気の時代劇であるのに、最終的に言ってることは武士の面目くそくらえ!とはシビれる。
半四郎の命を賭けた鬼神のような強さは、相対したすべての男たちを恐れさせ、結果としての勝ち負けはともかく、彼らに拭いようのない敗北感を与えたはず。虚しいラスト。
ここぞというシーンで、坂本龍一のすばらしい音楽をやたらめったら使わない贅沢さもニクイ。
息づかいまでリアルに聞こえてきそうでした。
斎藤勧解由さん、ふくふくとしたシロネコを飼っているのですが、命のやり取りの最中にもネコ様が平然と座布団の上に鎮座しているカットがひょいと挟まれたりする。
こういうセンス『竹光侍』を思い出してしまいます、竹光だし。
求女の家に住みついたネコも薄汚れているけどやはりシロネコで、しかし斉藤家のネコ様とは大きく運命が違ったりとか、ネコ好きは見逃せないところ。
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